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田頭裕先生

情報教育に取組む先生方へのアドバイス
〜「教師としての力量」を発揮して、アイデアに富んだ授業を〜

田頭 裕
東京都 小平市立小平第十五小学校・教頭


4月から始まる来年度の年間指導計画をこれから立てようとしている先生方に向けて、長年にわたり学校 教育現場の第一線で情報教育の実践に取り組んでいらっしゃる小平市立小平第十五小学校・田頭裕教頭先生にコンピュータを利用した情報教育に取組む際のアドバイスや注意点についてお伺いしました。

■ 2003/03/10掲載

田頭裕先生今日の情報教育を取り巻く環境と、情報教育の必要性についてどう思われますか?

田頭先生:小平市では、すべての学校にコンピュータが整備されており、ほとんどの学校がストレスのない回線速度でインターネットにも接続します。数年前までは確かに整備も行き届いておらず、導入されているコンピュータは古いものもあったため、それを理由にコンピュータを授業で使わないといった状況がありました。しかし、今日のように情報教育を行うことができる環境が整っている当市においては、これまで敬遠されていた先生もその言い訳は通用しなくなってしまってきているなと感じます。

成績処理などの校務においては、すでにコンピュータを利用している先生も多いと思います。校務文書の作成においてもコンピュータの利用は進んでいるのではないでしょうか。私の学校では、ほとんどの職員会議の提案が、ワープロで作成されているといった状況です。

このように、状況が変化する中で、学習活動の中でコンピュータを利用する必然性がでてきたと思います。教科書にも「ホームページで調べてみよう」といった内容があるように、これまで敬遠されていた先生でも「コンピュータを使わなくては」という気持ちが盛り上がってきていると感じます。

私が以前から情報教育に取り組んでいる理由は、新しい技術を使うことにより、いろいろな新しい授業に挑戦してみたいからです。鉛筆や定規と同じように道具としてコンピュータを使うことで、子どもたちにとって今まで出来なかったことができるようになり、活動の幅を広げていきたいからです。そして、子どもたちがコンピュータに対しての興味と使ってみたいという希望に応えたいと思ったからです。

 

コンピュータ活用の利点はどのようなところにあるとお考えですか?

 

田頭先生:コンピュータを使った授業をするメリットとして、データを蓄積できる・コミュニケーションの道具として活用できる・絵や文章を作成できるという点が挙げられます。

特にデータを蓄積できるという点で、コンピュータを利用した学習活動は優れていると思います。子どもたちがコンピュータを使って作成した全ての作品は、場所もとらず簡単に保存できます。10時間、100時間とコンピュータを利用した学習活動を続けていったときにデータを蓄積していった価値がでてきます。

例えば、読書の記録や観察カードを蓄積するといったことを想像していただければわかると思います。デジタル化して蓄積することによって、子ども自らが、長期にわたった変化を見たり、学習の足跡を振り返ったりすることができるようになります。子どもたち同士で作品を見せあったり、自分の記録として後から役立てるなど、新たな学習につなげることもできます。これはコンピュータならではのメリットではないでしょうか。

私はこれまで子どもたちのデータをなくさないようにネットワーク上のサーバの中に保存してきました。これらのデータは子どもたち1人1人の学年・年度を越えて履歴・資料として振り返ったり、指導の成果・例としてこのように (※コンピュータから子ども達が作成した作品を起動して見せていただく) すぐに提示したりするといった際にも役に立ちます。

コンピュータには苦手なこともあります。例えば、子ども達1人1人に適切なコメントを与えることなどは教師自身の役割であることは言うまでもありません。


 

田頭裕先生

コンピュータに不慣れな先生は不安を持っていると思いますが

田頭先生:コンピュータを利用した授業を行うことによって、逆に「学習の効率」の面では下がってしまうこともあります。黒板とチョークや教科書やノートを使った授業の方が効率がよい場面があります。

また、コンピュータを使うと、よくトラブルが発生します。コンピュータルーム内の子どもたちが使うコンピュータの調子がおかしく動かないということもよくあります。

ビジネスで使っているシステムをそのまま学校へ導入している所も多いと思います。子どもたちの作品を印刷する際に、「では印刷しましょう」で全てのコンピュータから一斉にプリンターに印刷をかけてプリンターが対応しきれないということが学校ではよく起こります。会社では全てのパソコンから一斉に印刷命令をかけることはありえないので、システムが対応していないのです。その他にも、授業中さまざまな不都合が発生する場合があります。

初めての先生はトラブルが発生すると焦ってしまうと思います。不測の事態への対応・操作の面での不安から、コンピュータを利用した授業を遠ざけてしまうのではないかと思います。

最新のパソコンでもトラブルは起きます。使い込めば使い込むほど、コンピュータのトラブルに遭遇する可能性が増えています。「コンピュータはそういうものだ」くらいの軽い気持ちをもっていただきたいと思います。20台や40台のコンピュータをすべて子どもに割り当てるのではなく、コンピュータの調子が悪くなった時に備えてコンピュータを交換できるように予め予備のコンピュータを設定しておくなどの配慮をしておくとよいでしょう。

また、コンピュータを使うより、紙を使った方が効率がいいという場合もありますし、すべてをコンピュータで完結する必要はありません。必要に応じて、子どもたちが使い慣れている紙や鉛筆をコンピュータと一緒に使っていくことで、学習の効率は大きく上がることが多いです。

コンピュータを使った授業では、操作面に先生の注意がいってしまい、学習のねらいが不明確になる授業をよく見かけます。

「学習の目標」をしっかり持った計画をたてることが重要です。インターネットなど操作のHOW TO は子どもの理解が早いし、家で操作して知っている子もいます。検索も見様見真似で調べることができますし、操作について子ども達同士で教えあうことも普通に行われます。

先生は操作のHOW TO の指導ばかりを気にすると本来の学習の目標が曇ります。

情報教育に取組む際の注意点について教えてください

田頭先生:コンピュータを使った学習活動を行う際、特に注意すべき点は、コンピュータの操作習得・リテラシーのみを教えることに陥ってはいけないという点です。

学習の目標が「インターネットで検索をすることができる」ではおかしいと思います。「インターネットを体験してみましょう」だけでは、「ワープロは打てるけど作文ができない」ことと同じ結果になるからです。

コンピュータを初めて使いだした時や、文字入力のタイピングに関しては、HOW TOを教える時間をとることが必要になります。それ以外はその都度、学習に必要なものを必要に応じて教えていけばよいと思います。子どもたちは、操作をすぐにマスターしていきます。

その学習本来のねらいを達成しながら、コンピュータとはこんな道具だということと、コンピュータを使った時に配慮すべきこと(ネチケットや情報モラル)を学んでいくことが重要です。

これから情報教育に取組もうとされる先生方へアドバイスをお願いします

田頭先生:「コンピュータが子どもをだめにする」という意見もあり、「とにかくコンピュータを使えばいい」というものでは決してありません。

「教師が黒板に書くこと」一つをとっても、子どもの理解に合わせた速度でゆっくり書くことが必要な場面もあります。常に速く書けば良いわけではないのです。学習を進める指導者にはいろいろな技術が必要です。コンピュータの利用もこのように、教育的な技術がしっかりと身につけている上での利用でなくてはなりません。

コンピュータを利用する・しないに関わらず、最も大切であるのは、本来の教育の部分であって、教育者としての力量なくしてコンピュータの有効活用はありえません。
 私はコンピュータを増幅器(アンプ)だと思っています。良い授業はより良くなる。悪い授業はより悪くなります。

情報教育は“操作”に目を眩ませないで、学習が持っている“ねらい”をきちんと教師がつかみ、学習が達成されているかどうか、何を子どもたちが学んだのか という所をしっかりと評価して実施していけるとよいと思います。

田頭裕先生