インタビュー&コラム

Tripartite Talk

【鼎談】これからの校務を考える
高橋 純 (写真右)富山大学 人間発達科学部 准教授
野間俊彦
 (写真中央)東京都北区立西ヶ原小学校 副校長
鈴木利幸
 (写真左)スズキ教育ソフト(株) 開発企画部 部長

(2008/05掲載)


鈴木利幸 
スズキ教育ソフト(株) 開発企画部 部長

教育活動の質的改善を達成するために
“校務の情報化”は必要である

鈴木/本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。今回は、『これからの校務を考える』というテーマで、“校務の情報化”に焦点をあてながらお話をいただきたいと思います。
さて、まず、こちらのアンケートをご覧いただきたいのですが、「“校務の情報化”の必要性は認識されているか」という問いを教育委員会と学校に投げかけたところ、圧倒的多数の方が「是非必要である」「必要である」と回答しています。これを見る限り、“校務の情報化”は必要であると考えられるわけですが、実際に、今の学校はどのような状況なのでしょうか。

※(社)日本教育工学振興会〈JAPET〉の平成18年度文部科学省委託研究「校務情報化の現状と今後の在り方に関する研究」より、「校務情報化の現状」

 


野間俊彦 
東京都北区立西ヶ原小学校 副校長 

 野間/“校務の情報化”についての必要性の認識では一致していると言えると思います。
しかし、例えば「通知表作成」のように、まだまだ手書きによる作成を重視する傾向はあります。特に小学校などでは、担任の先生が、ひとりひとりの子どもの姿を思い浮かべ、活動を振り返りながら通知表を作成しています。もちろん、膨大な時間が必要となるわけですが、それでも、先生にとって欠かすことのできない校務と考えられています。

高橋/確かに小学校の先生は、通知表を作成するにあたって、子どもがこれまでに作った数多くの作品や学習の記録を広げ、様々な角度から子どもの成長を確かめていますね。こういった教育的な校務のみならず、書類を転記するだけのような事務的な校務もあり負担になっていますね。

鈴木/そうしますと、すべてを効率化することは難しいのかもしれませんが、負担を減らすという目的で情報化を考える必要性はあるということでしょうか。

野間/はい。“校務の情報化”は、単に効率化が目的ではなく、負担が減ることで授業準備等の時間を生み出すことが目的であると思います。これをしっかりと認識しないと、“校務の情報化”は進展していかないと感じます。


高橋 純
富山大学 人間発達科学部 准教授 

高橋/確かにそうですね。これまでの校務をただコンピュータ上に置き換えることが情報化ではないと思います。それでも、情報化は、そこからはじまるわけで、次に校務の効率化という観点で考えれば、校務負担を減らすことが目的になるでしょう。そして、最終的には、“校務の情報化”によって教育活動の質的改善が図られることが大きな目標ではないのでしょうか。

野間/“校務の情報化”の必要性は感じているが、まだ各学校で推進されていないとすれば、それは、“校務の情報化”によって実現する学校の姿が見えないという点にも原因があるのかもしれません。

鈴木/先生方の校務というのは、年々、増えているのが現状です。したがって、今のままの普及状況では、“校務の情報化”の効果実感は、少ないとも考えられます。それでも、“校務の情報化”を実施している学校では、その効果を実感しているという調査結果があります。
やはり、高橋先生がおっしゃるように、“校務の情報化”が、結果として教育活動の質的改善をもたらすことが大切なのかもしれませんね。
ただ、学校現場において効果的に活用しうる機能や仕様を備えた情報化へ移行するためには、まず現状の「校務」をよく把握することが必要になってきますね。

 

 

教育委員会が環境を整備し、
学校長がリーダー役になる

鈴木/では、具体的に学校の先生が校務として負担を感じているものには、どのようなものがあるのでしょうか?

高橋/調査結果によれば、まず第一に『ホームページ作成』があり、続いて『成績処理』が挙げられています。その一方で、負担が低いと感じているものに、『学級通信』があります。『学級通信』も多くの時間を必要としていると思うのですが・・・。

野間/『学級通信』を負担に感じないとするのは、家庭からの反応を感じることができるからでしょうね。

高橋/そうなんでしょうね。逆に、学校の『ホームページ作成』は、情報公開という点で必要性が求められているものの、反応を実感できないことから大きな精神的負担になっているのでしょう。

鈴木/学校全体での“校務の情報化”推進が、ひとりの先生に作業が集中しているということはありませんか?

高橋/“校務の情報化”を推進するにあたっては、中心になる先生が必要なわけですが、それが、授業へのコンピュータ活用を推進する情報担当の先生であることも多く見かけます。

 野間/私がヒアリングをした中で言えば、そもそも校務とは何だろう、という問いに対して、ひとりひとりが違う考えを持っていることがわかりました。教材を作成するためにコンピュータを活用している先生をそのまま校務情報化の担当にあてるということに関しては、疑問を感じます。もちろん、それぞれが協力し合うことは大切なことではあります。

鈴木/情報担当の比較的若い先生が、学校全体の“校務の情報化”を推進することは、なかなか困難でしょうね。

野間/はい。やはり、学校内全体を掌握している校長先生などがリーダーとなって、“校務の情報化”を推進することが必要ではないでしょうか。

高橋/その環境整備については、教育委員会がしっかりと必要な機材を整えることが前提であり、校長先生をリーダーとして、学校内に推進役の先生を任命するのが良いのではないでしょうか。つまり、決断できる責任者の元に役割分担を明確にすることが大切であると思います。

 

“校務の情報化”が日常となるために

鈴木/役割分担の他に、実際に“校務の情報化”は、どのように進めれば良いとお考えですか?

野間/前提として、まず、環境を充実させることが必要になってきます。教員ひとり一台のコンピュータ体制とセキュリティ万全なネットワーク、校務処理ソフトといったシステム環境ですね。これは学校現場には急務で、いち早く実現していただきたいものです。この万全の環境が整備された後には、“校務の情報化”が日常的になっていくと考えられます。

鈴木/確かにそうですね。安心できる環境が整ってはじめて、成績処理やその基本となる名簿情報の取り扱いも安全に活用できるのでしょう。その先に出欠席情報、成績処理、通知表作成といった従来の校務を情報化することによる効率化がありますね。

高橋/教材作成や授業内容において情報化が進展している学校において、“校務の情報化”のために導入しやすいソフトは、メールソフトでしょう。これは、一旦導入すればわかることですが、校務においても便利なツールです。

野間/そうですね。校務でのメールの利用は、必需品ですね。私の前任校では、日常的にメール機能を活用していました。先生間どうしの連絡のやりとりには、大変便利ですし、そのメリットもわかりやすいと思います。

鈴木/保護者をはじめとする外部との連絡にもメールソフトの活用は有効ですね。

高橋/こうして考えると、“校務の情報化”と呼ばれるものには、実は、『従来の校務』と『新しい時代の校務』の2種類の情報化が存在するのがわかります。
『従来の校務』と呼べるものは、出欠席管理や通知表作成などで、これに関しては、コンピュータ上にデータを置き換えることからはじめて、まず、そのメリットを理解してもらうことが先決であると思います。

野間/そして、そこから『従来の校務』である出欠席の管理や成績処理、通知表をはじめ、各種帳票などの出力が情報化によって効率化されれば、かなりの部分で教員の負担は解消されると思います。

高橋/少しずつ目に見える改善を行っていくことで“校務の情報化”による効率化の成果をステップ・バイ・ステップで着実に確認していくことが大切でしょうね。 さらに、最終的には、“校務の情報化”によって教育活動の質的向上を目指すことができれば良いのではないでしょうか。

鈴木/本日は、ありがとうございました。弊社も先生への負担をスムーズな情報化によって支援する新しい製品群、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉をご提供することにより、校務の負担軽減に寄与していきたいと考えています。今後とも、よろしくお願いします。

スズキ教育ソフト