インタビュー&コラム

Column

シリーズ 解説:教材費予算

(1)教材費予算の全体像

社団法人 日本教材備品協会
専務理事 事務局長
小竹 真臣

(2008/10掲載)

“教材費”の財源

 義務教育諸学校の“教材”とは、教育指導をサポートし、教育効果を高めるための教育上の機器を教材としています。教育用のコンピュータ、ICT機器などのハードウェアや、ソフトウェアも“教材”の1つです。
 では、各学校の教材の整備に必要な財源はどのように措置されているのでしょうか?
 これまでの流れを簡単に説明しますと、まず、昭和28年義務教育費国庫負担法の施行により、教材費を国庫負担(補助金)の対象としてその整備が始まりました。
 昭和28年~32年は国庫からの一部負担(定額)とし、昭和33年~59年は1/2負担として整備されてきました。
 大きく変化したのは、昭和60年に補助金から教材整備に係わる所要経費が一般財源化され、地方交付税交付金によって措置されることになったことです。以後、今日まで教材整備の内容の変化はありますが、教材費の財源措置は一般財源化となっています。

 

 

国の地方交付税交付金制度について

 都道府県や全国の地方公共団体の財源の不均衡を調整すると共に、全国どこに住んでいる人にも一定の行政水準を確保できるように必要となる財源を調整し保障する制度です。本来地方公共団体の歳出は、その団体だけで賄うべきですが、税源は地域によってばらつきがあり、多くの地方公共団体が税収だけで必要な財源を確保できないのが実情です。税収がないということで教材用備品や図書などを整備しなくてもよいというわけにはいきません。 そこで、本来地方の税収とすべき財源を国が代わって徴収し、地方公共団体に地方財源措置(地方交付税交付金)をしています。地方交付税交付金の使途については税収と同様にそれぞれの地方公共団体が自由に決定することができます。
 税収が豊かな自治体は地方交付税交付金を受けることができません。平成20年度は都道府県では東京都、愛知県の2団体、市町村では千葉市、横浜市など177団体が不交付団体となっています。

 

各地方自治体への交付税措置について

 平成 19年の義務教育諸学校の教材費としては、単年度で約 790 憶円が地方交付税措置されていました。この算定はどのように行われているのでしょうか?
 地方交付税交付金の積算の基礎となる基準財政需要額(標準的な水準における行政を行うために必要となる一般財源)は地方交付税法及び総務省令の示す基準に基づき算定されます。地方公共団体が必要と認める財政負担額をその基準に取り入れて基準財政需要額の計算の対象とすることを一般に地方交付税で措置するといわれています。この財政負担額が財源補填の対象となります。
 公共義務教育諸学校における教材整備にかかる経費についても、この地方交付税措置が講じられています。
 各地方自治体における教材費についての予算は、一般会計の予算区分(款)10教育費の(項)2小学校費の中の(目)2教育振興費の備品購入費の区分のなかで計上されます。教育振興費には教材用消耗品や教材用備品の購入に要する費用、理科教育振興用備品や図書購入費などが含まれます。最近はインターネットで情報公開している自治体も多いので、是非、あなたの自治体の教材費予算がどのくらいの額であるかを調べてみてください。

 

 

あなたの学校の教材予算は? 

 文部科学省では毎年、各都道府県教育委員会に対して交付税の算定の基礎となる単位費用の額について通達(「公立義務教育諸学校の教材整備について(通知)」)を出しています。
 文部科学省の平成19年度 5月 17日付けの通知を見ると次の通りになっています。
 小学校(18 学級)3,202 千円
 中学校(15学級)3,002千円
 小学校1学級あたり177,888円。中学校1学級あたり200,133円 となっています。
 例えば1学年2クラスで12学級の小学校の場合、177,888円×12クラス=2,134,656円の教材費が措置されていることになります。
 あなたの学校の教材予算と比べて、いかがでしょうか?

 

 

実際の教材費予算措置率

 近年、現場の先生方から「効果的な教材を導入したくても、購入する予算がない…」といった声を聞きます。
 教材費が一般財源化された昭和60年以降の年度別の積算基礎に基づく教材整備に係る費用(基準財政需要額)と実際に措置された金額の割合である「教材費予算措置率」の推移については以下のグラフようになっています。
 近年、地方公共団体の厳しい財政状況などもあり、教材購入費は地方交付税の算定上の金額を大きく下回っている状況です。つまり、多くの自治体で教材費として充てられるはずの予算が自治体の判断により他の予算に充てているものと考えられます。この「教材費予算措置率」は、都道府県単位でみても地域により大きな格差があるのが実情です。

 

自治体財政部署への教材予算要求

 では、学校はどのように自治体財政部署に対して教材予算を要求すればよいのでしょう。
 (社)日本教材備品協会調べによる「自治体財政部署への教材予算要求時に必要な情報」によると、「学校からの予算要求資料」は当然のごとく非常に高い結果になっていますが、これらの補足資料として「教材の耐用年数・更新の目安」そして、「教材の導入効果に関する資料」「教材整備の明確な指標」などが望まれています。
 当該教材のカタログ等の情報はもちろんですが、教材に関する評価や、教科書などの単元との対応、そしてその活用事例や指導案といった活用効果がわかる情報が要求されています。

(1)教材を使って何ができるか
(2)その教材は教育課程の中でどこで使ったらよいか
(3)教材活用の効果がどのくらい期待できるか

 などの情報が教材整備の目安といえます。
 学校においてはこれらの観点で教材導入を弾力的に運用してもらい予算要求に反映していくことが必要と考えますが、このための整備の指針などは、業界として積極的に提案していく努力が大切です。
また、自治体においてはこれらの観点に応じた学校から要求のあがった教材について、その整備に優先順位を付けるなど、やはり弾力的に進めていく必要があると思います。

 

社団法人 日本教材備品協会

平成3年に学校で使用する教材教具メーカーとその教材を学校に販売する販売業者が一体となって優れた教材教具の開発と普及啓発を目指して組織され、その後の活動が評価され平成10年6月に文部大臣(現、文部科学大臣)より公益法人の認可を受ける。

【事業内容】

1.教材備品等の調査研究開発に関する事業
2.教材備品等の普及・啓発に関する事業
3.教材備品等の品質向上等に関する事業
4.教材備品等に関する刊行物の発行事業

【平成18年・19年度活動内容】

●文部科学省委託・委嘱事業への取り組み
●教育フェアー・展示会・講習会への取り組み
●JEMA安全基準適合認定制度への取り組み
●教材機能別分類表にもとづく教材整備台帳・教材ガイドブックの編集。

詳しくは、JEMAホームページをご覧ください。

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