授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

北海道 札幌市立栄緑小学校

地上デジタルテレビ放送を

いち早く授業に活用。

キューブとの連携を視野に、

子どもたちの夢の創造へ。

 

6年生 国語科
〈キューブきっずシリーズ〉活用事例 

2006/04掲載

 


札幌市立栄緑小学校

 

 子どもたちの夢を広げることが学校の願いであるとすれば、学習環境の整備は、その第一歩であるとも言える。インターネットをはじめとする新技術が取り巻くこれからの生活環境の中で、たくましく生きていくためには、ツールや媒体の活用は不可欠である。その点で、学校でいち早く学習体験を行うことは、子どもたちの可能性をさら広げることになると思われる。

 

「地上デジタルテレビ放送の教育活用促進事業」モデル校



3/3、東京にて開催された「地上デジタルテレビ放送の教育活用促進事業・モデル事業成果発表会」にて発表を行う、栄緑小学校・蔵本康彦校長先生。

 

 札幌市立栄緑小学校は、昭和58年3月に開校し、間もなく25周年を迎える。現在は、3年生が1クラスの他は各学年2クラスで、全校児童約280名が通っている。
 同校が、現在取り組んでいるのは、「地上デジタル放送の教育活用促進事業」モデル校としての実践研究である。

 この「地上デジタル放送の教育活用促進事業」とは、平成17年4月から、(財)日本視聴覚教育協会など4団体が連携して設立した地上デジタル放送教育活用促進協議会が、文部科学省の委託を受けて、全国の小・中・高等学校、放送局、教育委員会からなる地域コンソーシアムに対してモデル事業を推進しているプロジェクトである。事業は、3ヶ年計画で進められ、平成17年度は、札幌市をはじめ、東京都港区・三鷹市や千葉県船橋市など全国6地域、全20校によって取り組みが行われている。

 札幌市は、近くこの地上デジタル放送がスタートするのを踏まえ、「札幌市デジタル放送教育活用促進協議会」として、その教育活用を視野に入れた研究を市内の4校で実践している。研究テーマは、サーバ型放送による学校放送番組の活用およびインターネットを組み合わせた地域間(札幌─東京)交流である。

 市内4校のうちのひとつである栄緑小学校では、NHK札幌放送局と共同で、サーバ内に保存された放送番組や動画クリップなどを随時ピックアップして授業の中に活用してきた。

 

異校種/メディア/教科別の活用


校長室に置かれた新しいサーバ型放送のシステム。さまざまな教育用コンテンツをネットワークを通じて利用することができる。

 


教室には大型の地上デジタル対応テレビが設置されている。

 今回の「地上デジタルテレビ放送の教育活用促進事業」に先立ち、栄緑小学校では、「放送教育」の研究に取り組んできた。

 平成16年の秋に開催された「第56回北海道放送教育研究大会/札幌大会」においては、〈教科・メディア・異校種〉の3つのテーマで公開授業を行っている。この中のひとつ〈教科〉とは、NHKの教科、道徳、総合などの各番組を活用した授業であり、〈メディア〉とは、番組ホームページを利用したり、インターネットと融合させた授業のこと。さらに、〈異校種〉とは、幼・小連携、小・中連携による授業実践である。

 〈異校種〉ブロックの活動では、地元の栄光幼稚園の年長クラスを学校に招き、「つくってあそぼ」という番組を視聴しながら情景遊びに取り組んだ。これは、翌年に栄緑小学校に入学する園児を迎えるステップにもなり、交流の促進を目指したものである。

 また、〈教科〉ブロックでは、2年生国語の授業で、はじめてのこくご「ことばあ!」や4年生総合で「みんな生きている」などの番組が活用された。同様に、〈メディア〉ブロックでも、3年生理科の授業で、「ふしぎいっぱい」、6年生総合で「スーパーえいごリアン」などの番組クリップを取り入れた授業が公開されている。

 

交流学習をリンク、そしてHIENの取り組み

 

 

 離れた学校との交流学習では、学校間での情報機器環境の整備や学習テーマの策定など、事前準備が必要になる。
こうした課題も、地上デジタルテレビ放送を核とすることでスムーズに進展した例が、栄緑小学校と東京都港区の神応小学校との間で行われた4年生「トンボ調べ」の学習である。
 両校とも「地上デジタルテレビ放送の教育活用促進事業」に取り組んでいることもあり、お互いの観察結果を比べ合ったり、資料映像を交えて交流学習が行われた。

 また、栄緑小学校の情報教育への取り組みの根底には、15年前に情報教育の研修会で知り合った先生方によって活動をスタートさせた「HIEN(飛燕)」という活動がある。

 「HIEN(飛燕)」とは、Hokkaido Information & Education Network の略で、「北海道情報と教育ネットワーク」という正式名称のもと、北海道で活躍している先生方と、その活動を支えている教育関係業種との情報交流の場として、教育に関する情報交流、教材研究、素材・情報の収集などをネットワークとして推進する活動である。現在では、約40名の会員を擁して、研修会などを定期的に開催し、そこで集められた教育用コンテンツをデータ化して各学校に持ち帰るなどして活用している。集められた教材は、それぞれの地域に合わせて内容を修正できるような「半製品」であることが多いという 。

 

キューブを授業に活用

 

 


6年1組の授業の様子
(加賀田実紀先生)


6年2組の授業の様子
(今野真道先生)

 

 「地上デジタルテレビ放送の教育活用促進事業」への取り組みや「HIEN(飛燕)」への参加など、情報教育の充実した環境が整う中、栄緑小学校の子どもたちが授業でパソコンを活用する際に欠かせないソフトウェアとして、教育用統合ソフト〈キューブきっず〉がある。

 学校を訪問した日は、6年生国語「詩をつくろう」という学習の中で、あらかじめ創作しておいた詩をベースに、子どもたち一人一人が自分の詩をパソコン上で1ページに“編集”する作業が行われた。

 まずは詩の内容を文字入力。そして詩のイメージに合うようにページのデザインを自由に編集していった。文字色、文字の大きさ、背景の柄・色などを子どもたちそれぞれが工夫し、試行錯誤しながら詩のイメージを膨らませて思い思いに編集していく。

 〈キューブきっず〉にはあらかじめ素材が豊富に用意されており、これらを使ってそれそれが上手に仕上げていった。また、キューブきっずに内包されるお絵かきソフト〈キューブペイント〉を使って、自分で挿絵を描くといった絵が得意な子もいた。

 以前の授業で、動物園を見学した様子をプレゼンテーションソフト〈キューブプレゼン〉でまとめて発表するという活動を行っていることもあり、子どもたちはキューブの操作に惑いはない。今回活用したホームページ作成ソフト〈キューブページ〉でもスムーズに作成が行われいた。

  〈キューブきっず〉は、子どもたちにとって使いやすいツールです。特に制約を設けず自由に取り組ませています。」と、子どもたちの工夫する姿勢を尊重している。また、2組の今野真道先生は、「アドバイスをヒントに子どもたちは創造性を発揮していますね。」と、おおらかな気持ちで子どもたちを見つめている。

 

子どもたちに多くの夢を与えたい


蔵本康彦校長先生

 


岡田一朗先生

 

 

 情報教育に関連した授業計画を立てるなど、中心的な役割を果たしている岡田一朗先生は、「リテラシーは、計画的に行っていないのが現状です。一定のレールに乗せることなく、その都度対応していく方針です。」と子どもたちの様子を見極め、その変化を柔軟にとらえていくねらいである。
また、蔵本康彦校長先生は、「授業の中で地上デジタルテレビ放送の映像を見て、次の活動、例えば感想を書いたりまとめを行うなどの活動を〈キューブきっず〉で行うなど、連携した学習を推進していきたいと考えています。」と、より有機的にリンクした授業形態を模索している。

 そして、「子どもたちの可能性は無限です。それは、媒体やツールによってパワーアップしていきます。パソコンの活用によって表現手段の多様性を知り、広がりを体験し、交流が図られます。コミュニケーション能力が培われていくと『楽しい』と感じるようになります。そのために、より良いツールは何か、どんなソフトがいいのかということを考えていく必要があると思っています。子どもたちに夢を持ってもらいたい、というのが私の願いです。それを叶えるのが学校の仕事なのですから。」と語る蔵本康彦校長先生。

 豊かな学習体験の中で育まれた新しい感性は、きっと子どもたちの未来の扉を広げることになるだろう。

 

 

 

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