授業実践リポート ICT活用&情報教育

School Now

愛知県 名古屋市立大生小学校 

名古屋市立大生小学校

〈キューブきっず〉を活用した

“修学旅行おすすめガイドづくり”

相手を意識することで

大切なことが見えてくる

 

6年生 総合的な学習の時間
〈キューブきっずシリーズ〉活用事例 

2008/08掲載

 

名古屋市立大生小学校
名古屋市立大生小学校

 

 

 各教科学習でICTを活用する機会は、確実に広がりを見せている。また、ハード、ソフトの両面の充実は、調べ学習やまとめ学習、発表などの学習場面、その時々におけるタイムリーかつ効果的な学習の幅を広げる。
 各教科での活用はもちろんであるが、「総合的な学習の時間」は、ICT活用、また情報教育の側面からも複合的な学習機会を得られるチャンスなのかもしれない。
 今回訪問した愛知県名古屋市立大生小学校では、昨年までの2年間、名古屋市情報教育指導員を務めた小島敬一先生を中心に、低学年から情報教育に積極的に取り組む体制が敷かれていた。ホームページに掲載が実現するのである。

 

少人数指導を推進する大生小学校

名古屋市立大生小学校

 

 名古屋市立大生(たいせい)小学校は、名古屋市南区に位置し、名古屋港にもほど近い。学校の周辺は、古くからの住宅地である。市街化開発が進んでいた時期には、大生小学校から2つの分校が創られるほど、著しい人口の増加も見られた。

 周辺環境が変化する中、近年では大生小学校の児童数は横這いの状態が続いている。今年度の児童数は193名。1・6年が2クラス、他の学年は1クラスであり、少人数指導を推進しているという。

 

 

 

小島先生の情報教育指導員としての2年間

小島敬一先生
小島敬一先生

 

 6年1組の担任である小島敬一先生は、昨年までの2年間、名古屋市情報教育指導員を務めていた。

 この情報教育指導員とは、教育委員会の委嘱を受け先導的な実践経験と指導のノウハウを持つ先生方が指導員となり、名古屋市内の訪問を希望する小・中学校に対して、同じ教育現場の視点から教育の情報化についてアドバイスを行う支援体制とのこと。普段は、自校で授業を教えながら、毎週2日間は情報教育指導員として他校に出向いていたとのことで、非常に忙しい日々であったことが推察される。

 「愛知県、そして名古屋市のICT活用度は、全国的な比較においても満足な状況とは言えず、これから活用向上に向けて動き出すという状況であったため、情報教育指導員の役割には期待が寄せられていたと思います。また、各校を回って感じたことは、情報モラル指導に関して学校現場からの問い合わせが非常に多かったことです。」と話す小島先生。近隣他校の現状を把握しつつ、自校での情報教育を推進するには、幾多の苦労があったことと思われる。

 

6年1組「総合」修学旅行おすすめガイドづくり

修学旅行ガイドブックを参考に情報を確かめる
修学旅行前にに調べたこと、旅行中に学んだことを持ち寄り、グループで「おすすめガイド」を作成。

キューブページ(キューブきっず2)で作成した「おすすめガイド」
キューブページ(キューブきっず2)で作成した「おすすめガイド」

 

 

授業風景

 ここ数年、同校の6年生時における「総合的な学習の時間」は、1学期に『修学旅行』を題材としたもの、2学期から3学期にかけては『福祉』をテーマとした学習が組まれてきた。

 今年度も同様で、7月初旬に授業を見学させていただいた際には、『修学旅行おすすめガイドづくり』が最終段階に近づいていた。

 この学習では、5月の修学旅行に先立ち、グループごとに担当を決めて行き先である京都・奈良についての事前学習が行われた。旅行先での調べ方や調べる内容の準備などに6時間を、続く5時間をインターネットや本などで調べる時間にあてられた。そして、旅行中に撮影した写真や現地で実際に調べたことなどを持ち寄り、グループごとに『おすすめガイド』を作成する時間が13時間予定されている。最後に発表の時間が2時間設定され学習が完結する流れとなっている。

 見学したこの日、教育用統合ソフト〈キューブきっず〉のキューブページで作成した子どもたちの『おすすめガイド』は、一見すでに完成しているようにも思えるほどに仕上がっていた。しかし、ここで小島先生から一つの問い掛けがある。「みんながつくった『おすすめガイド』に、間違った内容はありませんか?」と。

小島敬一先生不正確な情報の例示

あえて不正確な情報が入った解説画面を例示し、おかしいと思うところを見つける。

 

そして、先生は、子どもたちのパソコンに一斉にある解説画面を送信・表示させた。そこには、誤字や脱字をはじめ、不正確な記述などが含まれていた。それを見つけた子どもたちは、一つ一つの間違いを指摘していった。

 

 

大切なことは、『確かめる』こと

「間違っていない情報」は?

 

「みなさんのおすすめガイドは正しい情報ですか?」

 

 

 

 

「正しい情報とは?」の問いかけに、子どもたちは・・・

 間違いが一通り出そろった後、小島先生は、「では、正しい情報とは、どんなものだろう?」と再び問い掛ける。「公式のホームページに載っている内容」「いくつかの情報源を調べ集めたもの」「辞典に載っていること」などが正しい情報と呼べることが確認され、それに続いて小島先生は、「大切なことは、『確かめる』という行為です」と子どもたち一人一人の顔を見渡しながら丁寧に話しかけた。

ワークシート「正しさたしかめカード」
ワークシート
「正しさたしかめカード」

 子どもたちは、少々不安顔になる。「自分は、確かめただろうか?」と。教室の空気が少しそわそわとした中、先生は、「それでは、自分のつくったおすすめガイドに間違いがないかどうか確認してみましょう」と話し、「正しさたしかめカード」を配布した。

 子どもたちは、自分が作成したページを開き、この「正しさたしかめカード」ワークシートに、間違いを記入していく。誤字・脱字の他、住所の間違いなどが見つかっていく。続いて、他のグループが作成したページを開いて、同じように間違いを見つけていく。ここでも、あらたに間違いが発見されるなどして、「正しさたしかめカード」ワークシートには、いくつかの指摘が記入されていった。

ワークシート「正しさ確かめカード」に間違いを見つけて記入

先生が見つけたたしかめカード
先生が見つけた
たしかめカード

 子どもたちにとっては、多くの間違いを発見し、発見されたことが意外なことであったかもしれない。そして、作成したものを振り返って見つめなおす事の大切さにあらためて気づいた様子であった。この後、小島先生は、先生自身があらかじめチェックして作成した「先生が見つけたたしかめカード」を配布した。

 そして、「いよいよ作り直してみよう!」という合図とともに、短い時間ではあるものの、子どもたちはキューブページを開き、修正作業に入っていった。

 

役に立つ正しい情報を提供しよう
意識するのは「人に伝えること」

机間巡視をする小島先生

 

 「文字サイズやレイアウトのバランス、配色などに関しては、子どもたち同士で意見が出され検討されました。これによって、見やすさに対する意識は高まったと感じました。しかし、子どもたちが作成したものの中には、単純な記述ミスなどもありました。これは、確かめるという作業を行っていないために起こるもので、また、人に見せるという責任意識が薄いのが要因であるとも感じました。

 そこで、『役に立つ正しい情報を提供しよう』という呼び掛けることにしました。なぜなら、人に見せるということは、その内容に責任を持って伝えるということだからです。さらに、情報を発信する側に立ち自分のガイドへの指摘を受け、また友達の作ったガイドの情報を見て指摘することで、情報そのものの大切さについても学ぶことができたとも思います。」と小島先生はねらいを強調する。

 『修学旅行おすすめガイド』を作成した後、同地に修学旅行で行く市内の小学校にガイドを贈り修学旅行の参考にしてもらうように計画しているという。

 

相手を意識した情報教育

小島敬一先生
小島敬一先生

 

 

 

 

 大生小学校では、携帯電話やネット社会の発展など子どもたちを取り巻く現状に対応した情報モラル学習も随時推進している。

 「道徳」の時間に携帯電話の安全性について学習した際には、なりすましや不正請求などの仕組みを〈あんしん・あんぜん情報モラル〉のムービーを見るなどして授業を進めたという。

 この他にも、学校で携帯メール安全教室を開催するなどしたところ、実際に友達同士のメールによるトラブルが減少したという。また、各家庭で携帯メールの使い方について約束事を設けるなどの対策も増えたという。

 小島先生によれば、「携帯メールもパソコンメールも、考え方は同じです。禁止を前提とした指導ではなく、立ち止まって子どもたちに考えさせる機会を与えることが大事なのだと思います。そのためには、『家庭力』が重要であることに間違いはありません。そして、情報モラル学習や交流学習、成果物をつくり発表する学習でも、相手を意識すると大事なことが見えてくるのだと思います。」とあらゆる場面においてコミュニケーション能力の育成が急がれていることを強調していた。

 『それは正しい情報ですか?』

 発信も受信も、お互いに責任を持つことで信頼できるコミュニケーションが成立することをあらためて実感することができた。子どもたちは、今、それを学ぶ機会に立っている。それは、その後の人間形成に大きな役割を果たすことになるに違いない。

 

みんなキューブから親しんでいく

 同校では、生活科などの時間に、キューブを活用してマウスレッスンを行ったり、お絵かきのぬりえや名刺づくりを通じてコンピュータに親しむ機会を設けている。

 3年生以降は、「総合的な学習の時間」を中心としてコンピュータリテラシーを身に付ける機会が設定され、コンピュータスキルは、段階的に高めるようになっている。『キーボー島アドベンチャー』の活用によるキーボード入力練習も取り入れ、コンピュータリテラシーは着実に身に付いているようだ。

 低学年からキューブを活用していることで、子どもたちは、高学年になると自然とコンピュータの操作に慣れているという。

 小島先生によれば、「個人フォルダ(ポケット)が作られ、そこに成果物を保存できる仕組みが自然な形で使いやすいですし、教師にとっては一人一人の作品が整理された状態で見ることができ、とても便利です。低学年から使い始めることで、子どもたちが徐々にスキルアップしているのも感じます。また、どんな学習でも、子どもたちのつまづきの原因が『文字』にあることが多いものです。漢字を読める力がないと学習もストップしてしまいます。その点では、キューブブラウザにあるひらがな表記はうれしい機能です。これによって子どもたちは、検索作業でもくじけなくなりました。」と子どもたちの学習意欲を損なわない教育への配慮をもった機能を評価する。

 また、「今回の6年生の『修学旅行おすすめガイド』づくりでは、キューブページによる共同編集を行いました。これは、一つのファイルをグループごとに分担して同時に共同編集作業ができる点で便利でした。みんなで協力し合って作成することで、学び合い、教え合って学習することができたと思います。」と振り返る小島先生。子どもたち一人一人の個人差が解消されるとともに、キューブページからHTML化し、ブラウザで閲覧できるのも汎用的で良いという判断があったようだ。

 そして、2学期以降の『福祉』の学習では、「学習成果の発表を3学期の学習発表会の時に予定しているのですが、キューブプレゼンを使って手軽に短く伝える工夫をしていきたいと考えています。」と、今後もキューブきっずを継続して活用する計画が立てられている。

 

 

ページのトップへ戻る

スズキ教育ソフト