授業実践リポート ICT活用&情報教育

京都府 京都市立桂徳小学校

「プロの技」を学ばせて、より「伝わる」ように

 タブレットPCと表現活動支援ツールで「伝わる力」の育成

活用した教科

1年国語 : 「これはなんでしょう」

4年国語 : 「本紹介リーフレット」

6年理科 : 「環境学習レポート作り」

2014/07掲載

教務主任の山本直樹先生にお話を伺いました。

京都市の西方に位置し、歴史と自然に囲まれた京都市立桂徳小学校。
教務主任の山本直樹先生は、国語と理科の授業でタブレットPCを活用した。先生に、タブレットPCの活用を中心に、そのメリットや「伝える力」の育成をするうえでのポイントなどを伺った。

タブレットPCだからこそ、低学年でも手軽に活用

タブレットPCでは低学年の子にも無理なく入力できる。3、4行の文章なら2、3分で入力。

写真もデジカメより簡単。そのまま取り込めて、すぐに使用できる。

 山本先生は、1年生国語の授業「これはなんでしょう」でタブレットPCを活用した。身の回りにあるものをクイズにする活動で、特徴を問題にしてだしあう。画用紙を使う場合は、表に問題を書き、裏に正解の絵を描いておく。今回の授業では、タブレットPCと、動画や音声などを使ったデジタルレポートが作成できる、表現活動支援ツール『E-REPORT COMP』を使った。
 先生によれば、「タブレットPCは、作るのはもちろん、問題をだしあう場面でも『サイズ感』がとても良いです」とのこと。しかし、初めは1年生に使わせることに不安もあった。「文字入力については、タブレットPCでは難しいだろうと思っていました。ところが、逆に低学年はやりやすかったですね。タブレットPCは、タップ操作であいうえお順のかな入力ができます。これが低学年の子には、圧倒的に入力しやすい。これが今回の大発見でした」と山本先生。初めて、タブレットPCと『E-REPORT COMP』にさわる子どもたちも、「簡単な説明でどんどん打てました」と振り返る。
 今回は、『E-REPORT COMP』にある、2枚の写真をフリック操作で切り替える〔写真の見せ方〕の機能を使った。画面上に、質問と「?」マークを示し、友だちが回答したら、「?」マークをフリックさせる。そうすると正解の写真がでてくるようにした。山本先生は、「子どもたちは大喜びでした。触ったら反応がおこる。これは画用紙ではできない仕掛けですね。同じことをパソコンとデジカメでやろうと思っても、1年生ではとても無理だし、教師もたいへんです」
  正解の写真がでてきた時の、子どもたちの輝くような喜びの表情が目に浮かぶ。タブレットPCと操作が簡単なソフトの組み合わせは、子どもたちにとっても先生にとっても力強い味方だ。

タブレットPCなら、「いつでもどこでも」活用できる

タブレットPCなら教室で、休み時間などにも続けられる。

「これはどうやってだすの?」子どもたち同士で自然に教え合いがおこる。

 4年国語「本の紹介リーフレット」では、3人ずつのグループで、交代しながら本の紹介リーフレットを作成した。ここで威力を発揮したのが『E-REPORT COMP』の〔結合〕という機能である。別々に作ったリーフレットを一つに結合して、「クラスの本の紹介」にすることができた。「学校図書館においておけば、『これ読んでみよう』というきっかけになり、発展的に図書委員会の活動にもつなげられます」と山本先生は期待する。
  この活動では、普通教室で休み時間などにも作業が続けられた。「全部、教室でできる。これはタブレットPCならではですね」 子どもたちが、自分から進んで作業を続けた様子が伺える。

自分にあった表現手段を、子どもたちに選ばせる

自分たちで作った空気砲をボンとたたくと、穴から空気の輪が出たり、ロウソクの炎が消える。実験では7メートル先の炎も消えた。リアルタイム感は動画ならでは。

動画は『E-REPORT COMP』のトリミング機能で簡単に編集できるので、使いたいところを使える。

 興味関心があることをテーマに設定し、レポートにまとめる6年理科の学習。山本先生は、手書き、パソコン、タブレットPCの中から手段を選ばせた。自分で絵や図を描きたい場合、動画で伝えたい場合など、何をどのように伝えるかによって適した手段があることを指導する。
  タブレットPCを選択したのは、空気砲を作成して実験を行ったグループと、ろ過器を作成して実験を行ったグループ。この2グループは、空気砲で、ロウソクの炎が消える様子や、ろ過器で汚水がきれいな水になる様子を動画で撮影し、『E-REPORT COMP』でレポートにした。動画の撮影も編集もとまどうことはなかった。
  何をどう伝えるかによって、子どもたち自身に表現手段を選択させる。山本先生は、その子の持っている特性を尊重し、「何が何でもICTで」とは考えていない。

「交流会(相互評価)」により、より「伝わる作品に」

「交流会」で、子どもたちが他のグループの「良い点」と「改善した方が良い点」を評価する。

 山本先生が大事にしていることは、最後の「交流会(相互評価)」の時間。子どもたちは、他のグループの作品を評価して、「良い点」と「改善した方が良い点」を、それぞれ青と赤の付箋紙に書いて貼り付けていく。「文字と絵のバランスが良い」という評価の一方で「自分たちの言葉で書いてない」などの評価が書かれている。その時、先生は、どこに注意して評価したら良いのか「評価の視点」を子どもたちに示す。気をつけないと「ホームページのまる写しや、きれいなイラストを使って、済ませてしまうことになりかねません」と先生は言う。「評価の視点」を明確に示すことで、子どもたちは相談しあい、練り合い、他の子からの評価を参考にして、より相手に伝わるものにしていく。作りっぱなしではなく、「伝わる作品に」していく工程をとても大切にしている。

プロの技を学ばせる

山本先生が子どもたちに示す「評価の視点」

  • ためになる情報がつまっているか?
    不必要な情報はないか
  • 文字よりイラストが多くなってないか?
    レポートは文字情報が大事
  • 6年生の文章になっているか?
    どこかの情報のまる写しではないか

「人に行動を促す言語表現をする時は、『行ってね』『見てね』といった直接的な表現はさけるように指導しています。『行きたい』『見たい』と思わせる表現をさせる。言葉なり、映像なりで人を引き付けることが大事です。」

 山本先生は、「伝える力」を意識した授業をするときに、取り入れていることがある。それは「プロの技」を子どもたちに学ばせることだ。本物のパンフレットやニュース映像を使い、色使いや表現を参考にさせたり、ニュースを文字におこして、限られた文字数の中に5W1Hがきちんと収まっていることを学ばせる。先生は、「感覚で教えるのではなく、実際のニュース映像を見せたり、その原稿を配るなどして、プロならではの技を具体的に伝えるようにしています」と、ポイントをあげる。そうしないと、「例えば、数字情報を『たくさん』とか『いっぱい』といった表現にしてしまい、プロがするように『年間600万人が・・・』といった、より具体的な言語表現をしません。それでは、作った気になるだけで、伝わる作品になりません」と力をこめる。
  表面的な「調べて、まとめる」活動で終るのではなく、しっかり相手に伝わるようにするために何が必要か、何が足りないのか、山本先生は、具体性をもった工夫で子どもたちを指導している。

京都市立桂徳小学校「ひとくちメモ」

京都市立桂徳小学校は、1986年(昭和61年)に桂小学校より独立し、開校。学校教育目標は「人を大切にし 確かな学びを創る子ども ~地域と共に歩む学校をめざして~」。
全校の子どもたちが、明るく元気に登校することを願い、それぞれの子どもたちが着実に成長していくための教育活動を推進しています。

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