授業実践リポート ICT活用&情報教育

愛知県 岡崎市立生平小学校

第17回キューブ活用コンテストグランプリ受賞校

 

年間を通じた学習テーマを設定、

観察・体験の成果をキューブでまとめて発表!

〈キューブきっずシリーズ〉活用事例

2015/07掲載

 毎年、各クラスが学習テーマを決め、年度末に保護者を招いて『ふるさとまとめ発表会』を開催している岡崎市立生平小学校。その学習成果をキューブ活用コンテストに応募し、例年優秀な成績を残してきた。
 今回は、1年生の作品『バードウォッチングとワタをそだててみんなでつくったよ』がグランプリに輝いた。受賞の報告と合わせて、担任を務め指導にあたった杉山康子先生に学習の様子を伺った。

野生生物保護モデル校として環境に合わせた学習を実践

杉山 康子 先生

玄関にはこれまでの野鳥に関する取り組みの数々が掲示されている。

学校の周囲で見られる野鳥の数は74種類。
マイ双眼鏡も所有するなど、高学年になると、見分け方も専門的だ。

 愛知県では、野鳥の保護活動等に積極的に取り組む小中学校40校を『野生生物保護モデル校』として指定、鳥獣保護思想の普及に努めている。岡崎市立生平小学校は、古くからこの指定校として学習活動を行っている。昭和57年には野鳥クラブが活動をはじめるなど、地域環境と密接にかかわる活動も推進され、地域社会からの理解・協力、連携も図られている。

 また、全国野生生物保護実績発表大会文部科学大臣賞奨励賞(平成24年)をはじめ同分野で多くの受賞歴を誇り、その活動に対しても高い評価を受けている。

 同校では、毎年5月に『野鳥を知ろう集会』を開催し、1年間取り組む学習課題を決める。その成果を保護者や地域の方に発表する場として、『ふるさとまとめ発表会』を年度末の2月に行っている。

1年生に『楽しい!』『できた!』を実感させる学習を構想

「バードウォッチング」で作成した手描きのイラスト入りウォッチングカード

観察された鳥の数が細かく記入されている。

「ワタをそだててみんなでつくったよ」の学習では、地域の方と交流しながら学習する。
写真は機織りをしている様子。

 1年生の担任を務めた杉山康子先生は、これまでの経験から1年生が野鳥に対してどのような興味を抱くかを知り得た上で、学習のまとめに使用するパソコンの操作にどこまで慣れ親しませるかを適切に判断、『背伸びをしない』ことを基本として今回の『バードウォッチングとワタをそだててみんなでつくったよ』に向かわせたという。

 「考え方の基本は、まず子どもたちが学習活動の中で『楽しい!』と感じ、その成果物が『できた!』と実感できること。そのためには、決して背伸びをして高度な学習場面を設定するのではなく、子どもたちが無理なく携われる範囲を見極めることだと思っています」と話す杉山先生。低学年では、無理してキーボードから文字を入力させず、文字パレットを利用する等、学年に応じたリテラシー習得も心がけている。

 そして、「特に今回の1年生では、クリックとドラッグのふたつの操作を覚えてもらおうと考えました。また、野鳥の数をグラフ化する場面では、パソコンのグラフ化機能を使わず、スタンプを利用しました。子どもたちには、スタンプを押す楽しみを与え、それがグラフ化されることでみんなが見やすくなることを伝えたかったのです。おそらく『おはじきを置いていくような感覚』が子どもたちの学習意欲を少し後押ししたと思います」と、杉山先生は"手作り感"の大切さを教えてくれた。

日々の学校生活の中に学習場面を作り継続させる

毎年度2月に実施される『ふるさとまとめ発表会』。体育館の中で、子どもたちは全員マイクを使うことなく地声で発表に臨む。その姿はハキハキとして気持ちいい。

1年間の作品を1冊に綴った作品集。卒業までの6年間、ずっと保管されていく。

作品づくりに携わった子どもたちは、現在3年生に進級している。子どもたちが経験した達成感は、この後もずっと記憶され、学習意欲を大きく促すきっかけになるに違いない。

 子どもたちは、その日に見た野鳥を所定の『ウォッチングカード』に記入していく。これが習慣化することで、学校生活に溶け込んだ学習場面が生まれる。『ウォッチングカード』は、鳥ごとにグラフ化され記録されていく。春から夏、秋、冬まで続けた活動の成果として、鳥のイラストとグラフがセットになった1枚のシートが完成する。発表会では、このスライドショーに合わせて子どもたち自身が体育館でコメントを読み上げた。

 また、作品の後半には、地域の方からいただいた綿の種を植えて育て、芽が出て葉が伸び、やがて花が咲き、できた綿をドライフラワーやリースづくりに役立てた後、さらに機織りを実践するまでの記録を地域の方との交流を交えて丁寧にまとめた活動も収録されている。

 そして、キューブ活用コンテスト応募に際しては、あらためて子どもたちが音声を収録し、ナレーションとして組み込まれた。

 「地域の方とふれあいながら、体験を通じて理解を深めることは大切なことです。子どもたちは、綿と一緒に育てた藍を実際に染めてTシャツまでつくりました。それは、とても貴重な体験になったと思います」と振り返る杉山先生。『ふるさとまとめ発表会』は、地域の誇りを改めて呼び覚ます活動にも結びついている。

グランプリ作品をCheck!
バードウォッチングとワタをそだててみんなでつくったよ

キューブページの機能を効果的に活用した先生のまとめ方の工夫がポイント

 同校の作品の受賞ポイントは、1年生でも無理なくICT活用に取り組めるように工夫した点をはじめ、キューブページ(ホームページ作成ソフト)の機能を効果的に活用してわかりやすくまとめた点が評価された。

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手描きとペイントを組み合わせ、低学年でも無理のない活用!

 「ワタをそだててみんなでつくったよ」のイラストも、コンピュータ上で最初から描くのではなく、まず手描きによる線画を作成して、それをスキャニングした後にコンピュータ上で着色するという手順を経ている。「全部コンピュータを使おうとすると、子どもたちの負担が大き過ぎます。部分的・効果的に活用することで簡単にできたという実感を味わってもらいたいと考えています」と杉山先生は方針を語る。

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