授業実践リポート ICT活用&情報教育

神奈川県 相模原市立橋本小学校

プログラミング教育実践事例②

子どもたちの実態に応じて今やるべきことをおさえる

5時間目の授業に向けてロボットの名前を決めておくように言われた子どもたちは、給食の時間からどんな名前をつけるか考え、楽しみにしていたという

授業者:目黒 祥平 先生

教科:5年3組 総合的な学習の時間

使用したソフト

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 目黒先生のクラスの子どもたちは、教科の学習などでこれまでにプログラミングの体験を3回行っている。今回は総合的な学習の時間の授業で、プログラミングに挑戦する。

2018/06掲載
※記載の情報は取材時のものです。

授業の概要

プログラムの構造を支える要素

 今回の授業は、一人一台の環境があるPC室で行われた。プログラムの構造を支える要素のうち、「順次」に焦点を絞ってプログラミングを体験し、身近な機器は命令によって動いていることに気付くことをねらいとする。

授業の流れ

子どもたちの身近にあるプログラムに気付かせる

 はじめに目黒先生から「身の回りにある機械を教えて」と投げかけがされると、普段からデジタル機器に触れている子どもたちからは様々な機器の名前が挙がった。便利な機器は「命令」によって自動的に動いていることを確認し、それらの命令を「プログラム」と呼ぶことを知識としておさえた。続けて、子どもたちの身近な題材を扱った映像教材を視聴し、「順次」のイメージを持つとともに、プログラミング体験への意欲を高めた。

ロボットとの握手でプログラミングを学ぶ

 いよいよプログラミング体験に入る。まずは、ロボットと握手をする課題に取り組んだ。実際に隣同士で握手をした後に課題に挑戦することで、普段何気なく行っている動作にもいくつかの手順があることに気付かせた。授業は、教師が大型テレビを使って操作方法を説明したりストーリーを読み上げたりして全体で進める場面と、個人で自由に進める場面を明確に分けて展開。子どもたちの操作スキルの差を考慮しながらも活動の時間を十分に確保する工夫がされていた。

お風呂掃除のプログラミング体験

残った汚れに気付いた児童は、「洗剤をまく」や「ブラシでこする」という命令を繰り返せばきれいになるのではないかと考え、自分なりのプログラムを組んでいた

 次にロボットにお風呂掃除をしてもらうためのプログラムを組む。試行錯誤したプログラムで合格判定が出ると、「こうしたらきれいになった!」と友達に見せたり、教え合ったりする姿も見られた。また、床に置かれたイスに注目し「この下がきれいにならない」と気付いた児童の発言をもとに、「次はイスを動かせるように命令しましょう」と全体へ呼びかけ、次の時間の「分岐」を扱う学習内容へつなげた。

ワークシートで振り返り、授業のポイントを押さえる

 授業のまとめとして、ワークシートを使って「プログラム」とは何か再確認。ワークシートの下部には情意面と知識面の両方が評価できるよう、「思ったこと」と「気付いたこと」を分けて記入する欄が用意されていた。

インタビュー

相模原市立橋本小学校 5年3組
目黒 祥平 先生

今、身に付けるべきことを考える

Q. 小学校プログラミング教育についてどう思われますか。
A. 学習指導要領の改訂で、先生にとっても子どもたちにとってもやらなければならないことが増えました。だからこそ、中学校の技術科との兼ね合いを考え、小学校段階では何を教えるのかということや、その教え方を考えることが大事だと思います。それは例えば体験であったり、知識であったり、身の回りのプログラムに対する興味や気付きであったりします。今回の授業では「プログラム」特に「順次」とは何かということをきちんとおさえようと思いました。

子どもたち一人ひとりの考え方を認める

合格判定のアラート

Q. <ぴたっと!プログラミング>を使ってみて、いかがでしたか。
A. 授業ガイドを参考に、子どもたちに付けたい力によって、教材の使い方を自分なりにアレンジできる点がよかったです。今回は分岐や反復には触れずに、順次だけをピックアップして授業を組み立てました。授業ガイドには発問や予想される児童のあらわれが載っているので、授業アイデアを出すためのたたき台になり、とても助かりました。プログラミング教育に不安を感じている先生ならなおさらだと思います。
 授業では子どもたち一人ひとりのプログラムの組み方を認め、大事にしました。お風呂の床をきれいにするには様々なやり方があり、試行錯誤する中でそれが「反復」や「分岐」の考え方につながっていくと思います。ですから、模範解答以外のプログラムに対しても、一定の条件をクリアしていれば合格判定のアラートが出る仕様に、とても共感できました。

まずは「触れる」ことから

Q. 初めてプログラミング教育をされる先生方へのアドバイスをいただければと思います。
A. 先生も子どもも、まずは「触れる」ことが大事なのではないでしょうか。子どもたちには機器に触ってもらい、「面白い!使ってみたい!」という段階が落ち着いたところで、はじめて本来の目的に向かった、様々な授業の流れが組み立てられると思います。とはいっても時間がない中で授業に取り組む先生がほとんどだと思いますので、すぐに教材や機器に触れられるような環境をつくることも大事ですね。

インタビュー

相模原市教育センター 指導主事
渡邊 茂一 先生

※ 旧 相模原市立総合学習センター

プログラミング教育推進のために様々な取り組みをしている相模原市。相模原市教育センターの渡邊指導主事に、プログラミング教育へのお考えや取り組みについて伺った。

子どもたちが「プログラムが使われているもの」に目を向けられるようになることを目指す

 小学校段階で重要なことは、プログラミングを体験することだと思います。新学習指導要領で示されているプログラミング教育で身に付けたいこととは、上手なプログラムの組み方を教えることではありません。課題解決のためには手順があり、それを人間が考えてプログラムすることによって身の回りのコンピューター等が動いていることに気付くことなのです。さらには、子どもたち自身が課題に出会ったときに、ここで学んだ手法を用いて解決策を考えられるようになることが大切だと思います。目指すのは思考力、判断力、表現力等の育成ですから、先生方は、プログラミングの知識がなくても、気負わずにまずは授業に取り組むとよいのではと考えています。
 プログラミング教育の授業を受けたあとに、子どもたちが世の中の「プログラムが使われているもの」に目を向けられるようになっていってくれれば良いと思っています。また、小学校での体験が中学校の技術科の学習内容の理解に繋がっていくことと期待しています。

実践的な研修を行う

 本市では、新学習指導要領の全面実施に向け、プログラミング教育がスムーズに実施されるよう、段階的に準備を進めています。教員自身が抱えるプログラミングの授業づくりに対する大きな不安感を解消するために「プログラミング教育に関する授業力向上」に取り組んでいます。
 平成29年度には、様々なプログラミング教材に触れる研修をはじめ、実践的な研修も行いました。例えば、市内全校の4年生の担任を対象として、算数の「およその数」の単元における授業づくりの研修を行いました。準備の段階では、校長会に事前に相談したり、教科の担当指導主事と内容を検討したり、ICT支援員にも参加を呼びかけるなどしました。研修の後には全校で授業実践に取り組んでもらい、約6000人の児童がプログラミング教育を体験しました。また、他の単元や教科でもプログラミングの授業に取り組もうと意欲を持つ教員が出てきたことも、副次的な成果として挙げられます。
 今後は、同様の研修を引き続き実施し、平成30年度には5年生、平成31年度には6年生の担任に対しても研修を実施していきます。中学校で新学習指導要領が全面実施される平成33年度には、小学校でプログラミングを体験した児童が中学校に入学します。中学校でのプログラミング教育も、きっとスムーズに行われることと思います。

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