授業実践リポート ICT活用&情報教育

愛知県 岡崎市立六ツ美北部小学校

第21回キューブ活用コンテストグランプリ受賞校

"体験"と"ICT"で

「書く」「話す」のかべを乗り越える

活動名 ぼく・わたしと ともだちのお話を作ろう
指導された先生 杉山 康子 先生
活動した児童 特別支援学級 つばさ・おおぞら・みどり組
活動の時間 図工、国語
使用ソフトウェア キューブプロジェクタ

〈キューブきっずシリーズ〉活用事例

第21回 キューブ活用コンテスト受賞結果 はこちら

2019/04掲載
※記載の情報は取材時のものです。

特別支援学級は1年生が2名、2年生と3年生が1名ずつ、4年生が8名、5年生が5名だ

 今回取材に伺ったのは、愛知県岡崎市にある六ツ美北部小学校。明治41年開校と歴史は古く、700名ほどの子どもたちが通っている。「むつみあう」のスローガンのもと、チームワークを大切にしながら勉強や部活動に取り組んでいる。

思いがけない受賞に喜び

みどり組 担任 杉山 康子 先生

 お話を伺ったのは、特別支援学級「みどり組」担任の杉山康子先生だ。書くことや話すことへの自信をつけてほしいと、手作りの人形を撮影した写真を使って自分の想いを表現した電子紙芝居をご応募いただいた。魅力あふれる題材とキューブプロジェクタを効果的に取り入れた活動が評価され、見事グランプリを受賞された。

―今回のグランプリ受賞のご感想をお聞かせください。

 実は特別支援学級を担任するのは今年度が初めてで、参加賞の色鉛筆がもらえたら子どもたちが喜ぶだろうなと思って応募したんです。それがグランプリをいただけて、びっくりしています。

―どのような経緯で今回の授業を行おうと思われたのですか?

 日記や行事作文など、文章を書くことが苦手な子どもが多いです。その原因のひとつとして、例えば「友達と遊んだ時のことを書きましょう」という言葉の指示だけでは、その時のことを思い出しにくいということがあるかと思います。そこで、自分がしたことやその時の気持ちを少しでも表現できるようにと、今回の授業を行いました。

作品ピックアップ

手作りの人形を用いて写真を撮り、キューブプロジェクタ※を活用して電子紙芝居を作成

私はしゅんやくんとしおみくんとぶら下がっています。私はしおみくんに「楽しいね」と言いました。しおみくんは「そうだね」と言ってくれました。

バルディとなわとびは、登っています。みかんの葉っぱでみかんに乗りました。バルディは慎重にみかんを採っています。

何かの鳴き声が聞こえてきました。近くに行くと大きな怪物が鳴いていました。私はその怪物の近くに行き、「どうしたの?」と言いました。

※画像や音声などを入れてスライドショーのように再生できるアプリケーション。

キーアイテムは手作りの人形

木片と針金で作った人形

―子どもたちが表現しやすいように、どのような工夫をされましたか?

 まず、自分や友達の分身となる人形をつくりました。そしてそれを様々な場所に置いて撮影し、その中からお気に入りの4枚を選び、それが物語になるように作文を書いていきました。今回、「体験」と「写真」が文章で表現するための大きな手がかりになったと感じています。

想いを表現するための素材

学校内の様々な場所で撮影を行う。中でも人気だったのは、植物園で撮影する「ミカン狩り」と、つなげて吊るす「ジャックと豆の木」の遊び。

撮った写真をプリントアウトし、作文は手書きで仕上げた

―どのような体験が、想いを表現する文章を書くことに繋がったのでしょうか?

 ひとつは、手足が自由に動く木製の人形を作ったことです。簡単に形が変えられ軽量のため、子どもたちの自由な発想を掻き立てました。人形に自分や友達の名前をつけることで、実際にはできないけどやってみたい!と思った木登りをさせたり、色々な所にぶら下げたりするなど、ワクワクするような疑似体験もできたのではないかと思います。愛着がわいたのか、休み時間に人形を持ち歩く児童もいました。
 また、タブレットで写真を撮ったことが子どもたちの意欲を引き出しました。自分から撮影ポイントを見つけたり、人気の撮影スポットができたりと、かなり盛り上がっていました。さらに、友達の人形と絡まらせたりつなげて吊るしたりしていたので、自然と会話が生まれたと思います。こうしたことが、子どもたちが文章を書く上で豊富な素材となって残ってくれました。この人形は、今回だけでなく、文章を書くためのツールのひとつとしてこれからも活躍しそうです。

―「写真」はどのような役割を果たしましたか?

 撮った写真はそれ自体が「表現」ですが、作文を書き進める上で子どもたちの視覚的支援にもなりました。また、私たちにとっても丁寧な発問をする手がかりになりました。行事作文では、個々のエピソードをひろって発問するのが難しかったり、教師が見ていたところと子ども自身が見ていたところが違って、子どもたちの想いを引き出すのが難しかったりもします。その結果、通り一遍な文章になってしまうこともありました。でも、今回は子どもたちに響く具体的な問いかけがしやすかったように思います。そのおかげか、人形の名前を呼びながら、人形の動きや遊んだ場所など、自分や友達のエピソードを話してくれる子がたくさんいました。

自分の言葉で話すことを支援する

賞状を受け取る子どもたちの表情も誇らしげ

―「写真」と「作文」、これらの素材を生かして最終的な作品にするまでのプロセスを教えてください。

 写真と音声の録音・編集ができるキューブプロジェクタを使って、子どもたちの発表の場をつくろうと思いました。電子紙芝居として形になることでよりグラフィカルになりますし、ICTは子どもたちが自分の言葉で話すことを実現するサポートをしてくれます。というのも、みんなの前で作文を読み上げて発表する、ということができる児童ばかりではありません。そこで作品を通して「話す」ことにしました。読むことに支援が必要な児童には、先生と一対一で、文字を指でなぞりながら音読するようにしました。視線を感じないこと、撮り直しができる安心感などにより、子どもたちも落ち着いて読み上げることができました。また、教室での一斉発表となると聞き手まで声が届かないということがありますが、ソフトを使えばマイクを近づけたり、音量を調整したりすることもできるため、特別支援学級でも活用しやすいです。ツールを通して自分が作った物語を聞き手に届けられたことが、自信につ ながったのではないかと思います。子どもたちは出来上がった自分の作品を何度も見返したり、友達の作品に興味を持ち、楽しそうに鑑賞し合っていました。

今回の授業の流れをまとめてご紹介!

①木片に色を塗り針金をつけた人形(自分や友達の分身)を図 工で作成

②自分の人形を使って、植物園や遊具、理科室などで自由に遊ぶ

③アングルも工夫しながら、タブレットで人形の写真を撮る

④撮った写真からお気に入りを4枚選び、それをもとに物語を書く

⑤キューブプロジェクタに、撮った写真とともに物語を読み上げた音声を配置する

⑥電子紙芝居となった作品を鑑賞し合う

杉山 康子 先生

受賞の秘訣は、みんなで楽しくつくること

 過去にもグランプリを受賞したことのある杉山先生。その秘訣を聞くと、少し答えに悩みながらも「子どもたちと一緒に楽しくつくること」だと答えてくれた。子どもたちからおもしろい発想や夢のある話が聞ければ、自分も笑える。それが自然と意欲を引き出す授業づくりにつながっているのかもしれない。
 また、「誰かの役に立っている実感」を大事にしているという。過去に受賞した4年生の作品は、学校内の共通サーバーに置いてあり、今でも他学年の学習に役立っていることが子どもたちの誇りだ。今回作った人形の材料も、先生が用意するのではなく4年生の児童がノコギリの学習で切った木片を利用した。また、人形づくりで使った針金は、数の学習をしている児童が今後も使う。特別支援学級は特性に応じて学習内容が違うからこそ、他者とのつながりを感じながら学習できるようにしているそうだ。

先生に聞く キューブ活用のポイント!

 普通学級の担任の時は、グループ活動の中に取り入れることが多かったです。しかし特別支援学級は、個々に応じた指導が基本です。キューブのポケット機能は個人学習と共同学習で使い分けができたり、個人で作成したものを利用して共同で仕上げるといったシーンでも便利だと思います。どの学年でも使えるため、学校全体での活用がしやすいとも言えますね。

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