授業実践リポート ICT活用&情報教育

1人1台端末環境のこれまでとこれから
~さとえ学園小学校の取り組み~

1人1台端末 活用事例①

埼玉県さいたま市学校法人佐藤栄学園さとえ学園小学校

科長山中 昭岳(やまなか あきたか)先生

https://satoe.ed.jp/

2023/12掲載
記載の情報は掲載時点のものです。

学校法人佐藤栄学園さとえ学園小学校(以下さとえ学園小学校)は埼玉県さいたま市にある私立の小学校。海に学び空に学ぶを掲げ、施設内には水族館やプラネタリウムもあるという学校です。そんなさとえ学園小学校の1人1台端末の整備の経緯と活用場面について、同校科長の山中昭岳先生にお聞きしました。

さとえ学園小学校が乗り越えた課題と成果

さとえ学園小学校で1人1台端末環境での授業が始まったのはいつですか?

2018年です。2018年の7月7日に約500人の児童に一斉に配布し持ち帰りを始めました。機種は検討の結果iPadを選択しました。学校で一括購入して貸与し、管理は学校でおこなうという体制でした。

その際、1番大変だったのはどんなことですか?

1番大変だったのは「iPadは子どもたちにとって、最高の遊び道具だった」ということです。子どもたちはいろいろなかたちで悪さをしてくれました。混乱のなかで、いっそのこと使用を禁止して取り上げては?学校内に限った利用にしては?などの意見もありましたが、私たちの主張は「iPadは文房具、文房具ならば学校で管理するのではなく、個人で管理できることを目指すべき」というものでした。そこで、学校ではICT担当教員を10人以上選任し、端末の使い方やルールについて保護者や児童に周知しました。

保護者の皆さまには不安な思いもさせてしまいましたが、端末の管理を個人に委ねる体制を目指し、子どもたちの力も信じながら進めました。

2020年度には、概ね目指したゴールに向けての整備が完了しました。2021年度からは、3年生以上はCYOD(Choose Your Own Device)を導入しています。学校からは「iPadであること」とだけ伝え、好みやニーズにあわせて家庭で選択し用意してもらっています。ここまでこられたのは、教員と児童そして保護者が一体となって取り組んだ成果だと思います。

課題を乗り越えるための「レベルアップ型ルール」

導入当初、iPadは子どもたちにとって最高の遊び道具でした。その時の苦労から生まれたのが「レベルアップ型ルール」です。これは、児童の端末利用の状況に応じて、グリーン・ブルー・ゴールドの3つのレベルに分け、レベルアップしていくというものです。しかし、導入から3年ほど経つと児童の成長が著しく、レベルアップ型ルールでは対応しきれなくなってきました。そこで、端末は保護者や児童の管理下におかれているという前提のもとに、3年生以上にはレベルキープ型ルールを導入しました。レベルキープ型ルールは、全員がブルーからスタートし、ルールに違反した場合は、言い訳なしにグリーンにダウンするというものです。児童は、自分の責任において端末を利用することを理解したからか、レベルダウンした児童はこれまでのところ1人もいません。現在、レベルアップ型ルールは1・2年生だけに採用しています。3年生以上は個人の端末なので学校で管理はしていません。

レベルアップ型ルール
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1人1台端末で振り返りの見える化へ

1人1台環境がすっかりなじんでいるようですが、学習面ではどんな場面で使っているのですか?

例えば、各教科等の振り返りの場面ではTravi(トラビ)を使っています。以前は、振り返りのシートが個別にしか閲覧できなかったため、複数のシートの確認が大変でした。しかし、Traviではシートが一覧で表示できるので、すぐに確認することができます。また、子どもたち自身も自分の振り返りシートを一覧で確認でき、自分の成長の様子や課題を把握できるようになっています。

1人1台端末+AIで、子どもたちの学びをさらに深める

Travi(トラビ)の試用機能である「テキストAI分析」もお使いいただいているとのことですが、いかがでしょうか?

総合的な学習の時間では、振り返りシートに必ず「次回の課題(本時で解決できなかった課題)」を入力させています。それをTraviのテキストAI分析機能で分析(分類)した結果、どんな項目がみんなの課題になっているかがわかり、すごく便利になりました。

テキストAI分析機能の結果イメージ
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AIについては、精度のことを懸念される声もありますが…

今回の分析結果に違和感はありませんでした。私自身がグループ分けしても同じ結果になると思います。子どもたちがやっていることと、ここに表示された結果が一致していたのでびっくりしました。次の授業で、課題別に活動させる場合、この結果が大変参考になります。

現在、TraviのAI分析機能は先生のみの機能ですが、今後、子どもたちにAIを使わせることも想定されていますか?

はい、使わせたいと考えています。その際は、AIリテラシーを身に付けるための指導が重要だと思います。また、プロンプトの書き方や、AI分析の結果をどう活用するかなども大事なことです。プロンプトの書き方による違いを比較して、どのように結果が変わるかを確認するなど、今後授業実践の中で学ばせることができたらと思っています。

1人1台端末環境そしてAIも含めた活用で、さらに学びを深める取り組みを進めていきたいと思います。

SATOE AQUA MUSEUM

https://satoe.ed.jp/aquarium/

さとえ学園小学校では全国的にも珍しい水族館が校内に設置されています。水族館は生態の観察や理科教育にとどまらず、環境保護や情操教育など、児童の未来に視野を向けた幅広い総合的な学習施設として利用されています。

水族館の入口

水族館の内部

ウミガメのお世話は3年生が担当

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