インタビュー&コラム

Column

金俊次 先生

校務の情報化ことはじめ 〈前編〉
「校務の情報化」の意義と準備

山形県米沢市立第四中学校 校長
金 俊次

(2010/04 掲載)

校務の情報化ことはじめ〈後編〉

 

なぜ今 校務の情報化の推進?

 学校現場で教員の多忙化が叫ばれてから久しく、週5日制の導入で土曜日が休みになり、平日の仕事量の増加や、教委などへの報告書の作成、生徒指導、校外活動等々、教員の仕事は増加の一途をたどっています。その多忙化の一つの解決策として「校務の情報化の推進」があるのだと思います。
 平成21年3月に文部科学省から出された「教育の情報化に関する手引」には、校務の情報化の目的は、「効率的な校務処理とその結果生み出される教育活動の質の改善にある。」と書かれています。その「効率的な事務処理」が、多忙化の解消につながり、そこで生まれた時間を本来の子どもたちと関わる時間にあて、教育活動の質の改善につなげて欲しいと読み取ることができます。
 しかし、グループウェアや校務ソフトを入れれば校務の情報化が進み「効率的な事務処理」ができるのかといえばそうではありません。それらはあくまでも情報を処理する道具ですから、どのようにそれらを使うかといった戦略が自治体や学校になければ「効率的な事務処理」が実現されないのはあたりまえです。
 今回は、昨年4月より本校での実践を通した経験を踏まえ、「校務の情報化」の意義と準備について述べます。

 

校務の情報化 その前に

 まずは、なぜ学校経営に「校務の情報化」を意識して取り組んでいるのかをお話しします。
 公立学校は公教育ですから、全国どこでも同じ水準の教育サービスを提供しなければなりません。そして、現場の教員は本当にまじめにその職務に取り組んでいます。しかし事務量は間違いなく増えています。教員の本業である教育活動を充実するためには、非効率的な事務を排除する必要があり、これは学校経営においてミドルリーダーも含め管理する立場の仕事だと考えています。また、学校は非常に多くの子どもや保護者の個人情報を扱っています。デジタル時代のセキュリティといった面も考えなければなりません。
 以前460万人の個人情報を漏洩した事件がありました。これがアナログ時代ならA4の紙1ページに80名の個人情報があるとして計算するとその紙の重量は約200kgにもなります。しかしデジタルならあっという間に持ち運べる時代です。
 学校にある個人情報もこのデジタル化が進んでおり、USBメモリーの紛失や、PCの盗難など、学校現場においても個人情報の流出事件が後を絶ちません。学校にある個人情報をしっかり管理する必要性が高まっており、その一つの解決策としてもこの校務の情報化が大切になります。
 なぜ学校経営に「校務の情報化」が必要なのかをまとめると…。
 1つは、教員の多忙感を解消することで本来の教育活動の充実を図ること。
 そして、2つめは、学校にある個人情報のセキュリティを確保するためです。
 校務の効率化を図るため何をなすべきかと考えたとき、一番はなんと言っても子どもたちの個人データです。名前、住所、生年月日等々、子どもたちの基本的な正しいデータの一本化と共有です。この基本データがしっかり一カ所に集まり管理されれば様々なデータに編集加工することで効率化が進み、しかもミスの発生率が極端に下がります。また、生徒の個人情報は学校のサーバーにあり、学校の中だけで活用をすることで、教員のPCへ保存、データ持ち帰り禁止など、セキュリティ面からいっても、大きな効果が期待出来ます。そして、この子どもたちの基礎データに加え、成績や生活指導、出欠記録、健康情報などが一カ所に蓄積され、参照できるようになれば、学年主任、学級担任、教科担任が、それぞれの立場で必要な情報を共有することができ、子どもたちを理解する大きな武器となります。また、PCに詳しくない教員も簡単に使える校務ソフト導入が「校務の情報化」への近道なのかもしれません。
 では、「校務の情報化」を進めるにあたって準備しなければならないことは何でしょうか。まずは、なぜ「校務の情報化」に取り組むのか、職員への意味づけと今後の見通しを伝えます。ここが最も大切なところで、職員の必要感がなければトップダウンをしてもなかなかスムーズに活用することは難しくなります。そして、活用するための必要な研修は、その作業が必要になる時にあわせ必要な分だけ短時間で研修出来るよう計画します。当然、保護者への理解を得るため、文書やPTA総会などで説明をします。
 この導入前の準備を丁寧にすることが、これからの運用をスムーズに行うための試金石だと考えます。

 

 今回は導入まで書きましたが、次号は実際に運用してみての成果と課題をお知らせしたいと思います。

校務の情報化ことはじめ〈後編〉

 

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