授業実践リポート

Report

※記載の情報は掲載当時のものです。

 

社団法人日本教育工学振興会(JAPET)主催による「伝える活動ワークショップ」セミナーが開催されました。全国3会場(浜松・千葉・熊本)の中から、8月に静岡県浜松市にて開催された同セミナーの様子をご紹介します。

 

「伝える活動ワークショップ」開催の目的

 新学習指導要領で強調されている〝言語学習の充実〟。教師は、映像や図表と言葉の行き来を、授業の中でどのように配慮していけば良いのか。相手意識、目的意識をどのように持たせながら授業をデザインしていけば良いのか。そして、子どもたちの本当の〝伝えるチカラ〟を育むには…。

  本セミナーは、中川一史先生(放送大学ICT活用・遠隔教育センター教授)による講演、伝えるチカラを育むために使えるソフトの紹介、実技をともなったワークショップ、そして実践発表+総括パネルを通して共に考えていただくことを目的に開催されました。

 

基調講演

活用型学習を 中心にした 言語活動の充実

講師:放送大学 ICT活用・遠隔教育センター 教授 中川 一史

表現力を身につけるための活用型学習の重要性



 日本人に比べ、外国の学生は、プレゼンテーションが上手です。これは、内容の素晴らしさというよりも、プレゼンテーション能力の上手さを意味しています。一方の日本人は、素晴らしい内容のプレゼンテーションを用意しながら、それを伝えるという力が劣っているようです。つまり、外国人は、自信を持ってプレゼンテーションに臨み、日本人は謙虚に臨んでいるとも言えます。結果的に、その点で日本人は損をしていることになるのです。
 これには、形式第一主義の学校教育が底辺にあることが挙げられます。一つには、こうした制度的な問題であり、その他には本物に出会っていないこと。さらには、切実感に迫られていないという環境が考えられます。
 プレゼンテーションにおいては、相手の表情を見て伝わっているのかどうかを判断しながら話すといった能力が必要となります。これが活用型学習を生かした大事な部分であるのです。
 活用型学習と習得型学習、そして探究型学習のバランスを並べた時、習得型学習の比重が大きく、また、それぞれが関連性を持たずに存在していることが多いのが現状です。しかし、本来は、学力を構成するこれらの形態が関連性を持つことが大事であり、実際には、活用型学習を起点として、習得型学習と探究型学習をいかに結びつけるかが大きな鍵となってきます。こうした授業デザインができると、アイデアがさらに広がっていくのではないでしょうか。

子どもたちの「伝える活動」を充実させよう

 私は、子どもたちの「伝える活動」を充実させるため、「伝えるチカラ プロジェクト」を通して研究を行っています。この中で意識していることは、『先生自身が、子どもたちに対して本当に伝える力を身につけさせるための授業をしているかどうか』という点です。
 例えば「新聞作成」の授業では、新聞のカタチだけをつくっていませんか?表面的な活動に終始していませんか?もっと子どもたちに揺さぶりをかけたらどうでしょうか?もっと踏み込んだ授業にできませんか?というような点を追求する必要があると感じています。“新聞作成もどき”“新聞作成風”の授業では残念ながら活用型学習には届きません。同様に、「プレゼンテーション」の授業においても、いつまでも大きな声で発表することが最大の目標になっていませんか?ということです。
 これは、基礎基本を疎かにするということではなく、活用型の学習スタイルにシフトしていくポイントを発見して、子どもたちに「伝える活動」を意識させた授業に発展させてほしいという考えなのです。
 さて、新聞作成においても、プレゼンテーションにおいても、映像や図表による言葉の理解促進が大きな比重を占めています。挿絵は文章を補い、子どもたちに理解を促す大きな存在になります。主張したいことを、言葉と映像・図表をともなって表現することは、活用型学習を広げていきます。その時、使用するハードウェアやソフトウェアは、できる限り透明化されるべきであると考えます。つまり、ソフトの使用方法に堪能になるのではありません。ソフトを使って伝えるチカラを身につけるのが目的なのです。したがって、できるだけ使いやすいソフトが望ましいのは言うまでもありません。
 子どもたちの「伝える活動」を充実させるためには、活用型学習を意識した授業デザインが求められています。先生方がそれを意識することで、子どもたちの言語活動・表現活動は飛躍的に成長すると確信しています。

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