キューブランド50号記念座談会 今、求められる「言語活動の充実」!

 

 

クローバー「伝えるチカラプロジェクト」と「研修パッケージ」

伝えるチカラPRESS 研修パッケージ中川 今、お二人が言われたように、教師の差配ということも大きいですが、誰もができるということではない。その時のひとつの助けとして「伝えるチカラプロジェクト」が誕生し、「研修パッケージ」をつくってきた。その経緯について社長の方からお聞かせください。
鈴木 私自身、子どもたちの国語の読む力ということに不安を感ずることが、中川先生に出会う前にありました。
 中学の理科の先生と話していたときに、「小学校で、もうちょっと国語の文章を読む力をつけさせてほしい。時々問題の意味がわからなくて、それで理科ができなくなってしまう子がいるのです。」という話を聞き、自分が何とかしなくてはと思っていました。中川先生から「伝えるチカラプロジェクト」の話をいただいた時は、運命の出会いを感じました(笑)。
 プロジェクトのなかで、新聞制作ソフトやプレゼンソフトなどのソフトウェアを作るというのは、別に教育ソフトメーカーでなくてもできることであって、我々が言語活動を育む、伝える力を育むと言う時に、ソフトウェアだけで良いのか、という議論がでました。それでプロジェクトの先生方と「研修パッケージ」を作成しました。「研修パッケージ」は、言語活動を育むにはどうしたら良いのか、ベテランの先生のノウハウを伝承していくというコンセプトで作られています。スキルアップのためのものではありません。それが大きな挑戦でした。
中川 ここにその「研修パッケージ」があるのですが、指導のポイントとして、相手意識、目的意識の持たせ方、文章の書き方、写真と文章の組み合わせ方、それから単元構成と手順、それから内容と構成を練るための条件設定。つまり授業づくりの着目点なり授業づくりそのものについて、どうあるべきか、すべて盛り込まれています。
佐藤 今回、指導要領で言語活動例がたくさんでてきたのですが、先生方がよく知らないものもでてきています。
 例えばリーフレットもそうですが、リーフレットって何だろうとか、プレゼンなんて自分もしたことがないとか。そこで、指導のポイントはここで、授業づくりではこうしたらうまくいく、と提案していくことで、いろいろな地域で研修ができれば良いなと思っています。
中川 だんだん若手の先生も増えてきた経緯もあり、先ほどの教科書づくりの話やソフトづくりの話にむすびつくわけですね。社長の話にあったように、授業づくりとソフトや教科書づくりの間で溝を埋めるように両者が手を延ばしていかないと全体が面にならない。その一つとして、「伝えるチカラPRESS」があると思っています。
菊池寛菊地 実際に、校内研修で「新聞」のワークショップ型研修をやりました。先生方の感想は、新聞を作る仕方が分かった、話し合いの進め方が分かった、ということでした。操作よりも自然にそちらの方に目がいったので、良かったと実感しました。
中川 ソフトの操作に目がいくのではなく、考えることに集中させるのにどうするか。ソフトづくりでも、教科書づくりでも、授業のイメージをもってもらう仕掛けということでは、同じだと思うのですが。
黒川 多くの指導的な立場の先生方が、「言語活動をするには、まず教師が体験せよ。」と語っておられますが、まさに、「研修パッケージ」で、先生が体験することを前提にされているのはとてもすばらしいし、言語活動の充実につながることだと思います。
中川 この「伝えるチカラPRESS」にかぎらず、ICTを使いながら言語活動の充実とのリンクをはかっていく事例について、先生方に話をしていただければと思います。
菊地 5年の「わたしたちの図書館改造提案」で、実際に提案書を作って、図書室の先生に提案することをしました。「リーフレット」で提案書を作りました。提案後、図書室が実際に変わっていく様子を子どもたちが見て、達成感に満ち溢れた様子でした。
 それから、「物語を作ろう」では、デジタルカメラを子どもたちに持たせてグループで写真を撮り物語を考えて、参観会で見てもらうということもしました。

 

クローバー「言語活動の充実」とICTの活用

中川 デジタルカメラを使うことで、なにがどのように違いますか。
菊地 グループでいろいろな視点で撮り、それを選ぶ時に、これが良いとか、ここをこうした方が良いと言う根拠を共有できるのが良いと思います。
キューブランド50号記念座談会中川 デジタルカメラは言語活動の充実に絡む重要なアイテムですね。写真と文章の組み合わせ、アップとルーズの問題もあるし、「どんな写真だと自分の思いが一番伝わるのか」という検討など、写真と思いの連動みたいなところがいろいろ考えられる。さらに、「グループでどれを選ぶのか」など、たくさん要素としてはちらばっていますね。
佐藤 私は、アップとルーズの学習では、デジタルテレビと電子黒板の両方を使って、アップの写真とルーズの写真を大映しにしました。
中川 例えばICT機器を使って、大映しにするのと、手元で児童が教科書を見るのと違うのですか。
佐藤 アップとルーズ、それぞれの写真からわかることを読みとらせ、デジタル教科書で大映しにした写真の部分に印をつけて、読み取りの根拠を共有化しました。それから、本文では、そこがどう書かれてあるかと本文にもどりました。そうすると、「すごく喜んだ顔で、すごく早く走っている」ということを、「服のそでがふくらんでいる」と言ったけれど、教科書には「風をはらんで」と書いてある。ここの表現は、こうすれば良いのだ、ということを子どもたちは学んでいきました。
 また、ルーズの方を見た時には、「喜ぶ」ではなく、「喜び合う」と書いてある、と言うのですね。たくさんの人の顔を拡大できるので、こんなにたくさんの人が喜んでいる。だから「喜ぶ」ではなく、「喜び合う」、という表現になっている。焦点化したり拡大したりというのは、やはりそれは紙ではできないことだと思います。

 

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