インタビュー&コラム

Column

アジアIT教育事情(1)
韓国のIT教育

東京工業大学 教授
赤堀 侃司

(2006/06掲載)

東京工業大学にて教育工学・情報教育の研究、また多方面にてご活躍されている赤堀先生に、全3回にわたり、わが国近隣のアジア各国のIT教育事情について語っていただきます。


写真1/音楽のリズム指導

普通教室でのIT活用

 写真1をご覧いただきたい。音楽のリズムを学ばせる小学校の授業風景である。2005年の夏にソウル市の小学校を訪問した。小学校の先生は、どの国でもやさしく明るく元気である。手拍子をさせるのであるが、なかなか揃わない。写真の左手にモニター画面があるが、その画面に楽譜が写っているが、その音符の色がリズム音と共に移り変わっていく。先生と子ども達は、この楽譜を見ながら手拍子を打つ。その手拍子は、教室中に響き渡った。画面の音符の色が変わることで、手拍子をとりやすくしていると同時に、音符の長さを手拍子という動作で、覚えていく。子どもを見る先生の目が笑っている。「はい、はい」と言いながら、子ども達をリードしていくが、モニター画面がなければリズム指導は難しいかもしれない。現代版「雀の学校」であった。
 この大型モニター画面にコンピュータソフトを映し出すという発想は、面白い。日本でもTV画面は、どの教室でもある。これからのデジタル化にしたがって、すべての教室のアナログ用TV画面を変えなければならないとすれば、韓国のように、大型TV画面を、スクリーンの代わりに活用したらどうであろうか。



写真2/図書館での調べ学習

調べ学習とIT活用

 韓国は、TIMSSと呼ばれる理数科の国際学力比較でも、PISAと呼ばれる国際学力比較でもトップクラスの学力を示したことで知られている。PISAは、生きるための知識と呼ばれるように、問題解決を問う学力である。日本では、PISAの読解力が低かったので、文部科学省も対応に迫られているが、韓国でも日本と同じような調べ学習を行っている。図書館があって、そこにはコンピュータが並んでおり、子ども達は、本やコンピュータで調べ、子ども同士が相談し、ノートに調べた内容を書いている。問題解決力の重要性は、どの国でも同じ認識であり、教科書だけの知識では身に付かない。自分で調べ、まとめ、表現し、発表するというスタイルで、習得される学力であるが、そこにコンピュータやインターネットが必要であることは、言うまでもない。
 韓国も日本もシンガポールも、アジアの国は、競争して生きていかなければならない。教科のためのIT活用と、問題解決のためのIT活用は、どの国でも必要である。

 

赤堀 侃司  先生 プロフィール

東京工業大学 教授

略歴

昭和19年7月21日,広島県呉市生まれ,
静岡県高等学校教諭、東京学芸大学講師,助教授,
東京工業大学助教授を経て,平成3年3月から現職,
平成6年,カリフォルニア大学アーバイン校コンピュータ科学部客員教授
東京工業大学・教育工学開発センターおよび大学院社会理工学研究科
人間行動システム専攻教育工学講座に在籍,
国連大学高等研究所客員教授・放送大学客員教授・文部省メディア教育開発センター客員教授の兼任
各種委員等は、文部省、青少年を取り巻く有害情報環境対策に関する調査研究協力者,
研究開発学校企画調査協力者会議の協力者,など

 

関連Web

赤堀研究室

基礎基本、課題解決能力とICTの関わり~諸外国の実践事例から~
/赤堀侃司

フィンランドのIT教育
/赤堀侃司

ニュージーランドのIT教育
/赤堀侃司

アメリカのIT教育
/赤堀侃司

韓国のIT教育
/赤堀侃司

シンガポールのIT教育
/赤堀侃司

中国のIT教育
/赤堀侃司

 

スズキ教育ソフト