インタビュー&コラム

Column

アジアIT教育事情(3)
中国のIT教育

東京工業大学 教授
赤堀 侃司

(2007/02掲載)

東京工業大学にて教育工学・情報教育の研究、また多方面にてご活躍されている赤堀先生に、全3回にわたり、わが国近隣のアジア各国のIT教育事情について語っていただきます。


写真1/小学校英語の学習風景

小学校の英語教育

 写真1をご覧いただきたい。中国の広州の小学校英語の授業風景である。中国で英語の授業と聞いて耳を疑った。しかも小学校である。我が国の小学校の英語は、英語ではなく英会話であるから、聞き慣れ親しむという目標になっている。しかし中国では、徹底したスキル教育である。聞き話し書くというスキルを小さい子どもから徹底させるという考えであった。写真のように黒板にスクリーンが設置されて、そこに食べ物の写真が写っている。この食べ物を見ながら、発音と単語のスペルを練習させる。それは、文字通り矢継ぎ早で、まさにトレーニングであった。語学はよく言われるように、練習や物真似であり、何度も何度も繰り返すことで習得されるが、それを実践している授業であった。
 そして注目されるのは、全員の制服姿と一斉に手が上がる光景である。かつての我が国の授業風景である。それがいいかどうかは議論の余地があろうが、中国の教育は、急速な経済発展と同じように、先進国に追いつき追い越せの時代にある。コンピュータは当然の道具で、広州市内の学校では、すべての普通教室にプロジェクターとスクリーンが設置されている。そして、教科指導にコンピュータを活用するねらいが強く、すべての教科においてICTを活用している。中学校を訪問したとき、情報モラルなどの問題はないのかと質問したら、ほとんど無いと言う。小学校でも朝7時から夕方5時まで授業がある。中学校は、全寮制が多い。つまり、教員の指導が徹底している国と言える。



写真2/小学校のプレゼンテーション

小学校の情報教育

 写真2は、同じ広州の小学生によるプレゼンテーションの光景である。コンピュータ室があって、子ども達は、お絵かきソフトで、与えられたテーマで、絵を描いたりストーリーを作ったりする。写真は、1人の子どもが、コンピュータ室の教卓でプレゼンテーションをしている光景である。コンピュータ室は、いくつかのテーブルがあり、1つのテーブルに6人程度の子どもがコンピュータを操作できる環境であった。リテラシーの授業であったが、この授業では、お互いに相談する学習形態が適している。コンピュータ操作につまずいたら、隣に相談すると、やりやすいからである。授業では、コンピュータ操作の学習と同時に、どのような内容で、何を訴えたいのか、という情報をいかに表現するかに焦点化されていた。これは、我が国と同じ考え方であった。

 

赤堀 侃司  先生 プロフィール

東京工業大学 教授

略歴

昭和19年7月21日,広島県呉市生まれ,
静岡県高等学校教諭、東京学芸大学講師,助教授,
東京工業大学助教授を経て,平成3年3月から現職,
平成6年,カリフォルニア大学アーバイン校コンピュータ科学部客員教授
東京工業大学・教育工学開発センターおよび大学院社会理工学研究科
人間行動システム専攻教育工学講座に在籍,
国連大学高等研究所客員教授・放送大学客員教授・文部省メディア教育開発センター客員教授の兼任
各種委員等は、文部省、青少年を取り巻く有害情報環境対策に関する調査研究協力者,
研究開発学校企画調査協力者会議の協力者,など

 

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