インタビュー&コラム

Column

IT世界教育事情 ー西方見聞録ー(3)
アメリカのIT教育

東京工業大学 教授
赤堀 侃司

(2007/06掲載)

東京工業大学にて教育工学・情報教育の研究、また多方面にてご活躍されている赤堀先生に、全3回にわたり、 世界のIT教育先進国の取組みについて語っていただきます。


写真1/サンフランシスコの高校の化学教室

ブレンド学習

 写真1をご覧いただきたい。アメリカのサンフランシスコの高等学校の授業風景である。
 アメリカと言っても、広い国なので、州によってカリキュラムも異なり、教育方法も多様である。高等学校の授業風景は珍しいので、本稿で紹介するが、この化学教室の環境を見ると、黒板があり、プロジェクターで資料を提示し、実験机にはガスバーナーなどの実験器具がある。このように、いくつかの道具を組み合わせて使っている。理科の授業なので、実験する、資料を提示して説明する、重要な内容は板書する、という活動ができるように、道具を準備することになる。
 メディアの基本は、このような組み合わせにあると言っても過言でない。すべてコンピュータで、すべて黒板で、すべて実物で、ということは、不可能であると同時に、意味がない。具体的なイメージがわくように、写真や動画やイラストをプロジェクターで提示する、提示した内容を見るだけでは知識が定着しないので、板書する、実験することで納得する、などのように、メディアの特性に応じて、活用するのである。
 メディアは道具である。道具は、それぞれの特性に応じた役割がある。その役割を活かす使い方が大切で、それはどの国であっても、変わらない。

 


写真2/サンフランシスコの高校のコンピュータ授業

机間巡視

 写真2は、同じ高等学校における、コンピュータの授業である。
 コンピュータの授業は、実習が中心である。生徒が中心になって活動する実習中心の授業では、どの国でも教員は机間巡視によって、個別に指導する。机間巡視では、画面を見ながら、問題点を指摘したり、アドバイスを与えたり、生徒達をほめたり、進行状態をチェックしたり、という重要な役割がある。基礎的な内容は、化学の授業のように、プロジェクターで提示し、板書し、実験し、というように、教員が主体になって、伝えることができる。これも、授業形態の組み合わせであり、ブレンド学習と言ってもよい。
 机間巡視することで、教員は、思わぬ発見をすることがある。こんなことでつまずいていたのか、こんな素晴らしいアイデアがあったのか、こんな感性があったのか、文字通り個別に生徒の特性を知るのである。それは、教員と生徒のコミュニケーションである。机間巡視で、コミュニケーションすることは、どの国でも同じである。

赤堀 侃司  先生 プロフィール

東京工業大学 教授

略歴

昭和19年7月21日,広島県呉市生まれ,
静岡県高等学校教諭、東京学芸大学講師,助教授,
東京工業大学助教授を経て,平成3年3月から現職,
平成6年,カリフォルニア大学アーバイン校コンピュータ科学部客員教授
東京工業大学・教育工学開発センターおよび大学院社会理工学研究科
人間行動システム専攻教育工学講座に在籍,
国連大学高等研究所客員教授・放送大学客員教授・文部省メディア教育開発センター客員教授の兼任
各種委員等は、文部省、青少年を取り巻く有害情報環境対策に関する調査研究協力者,
研究開発学校企画調査協力者会議の協力者,など

 

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