インタビュー&コラム

Column

IT世界教育事情 ー西方見聞録ー(2)
ニュージーランドのIT教育

東京工業大学 教授
赤堀 侃司

(2008/04掲載)

東京工業大学にて教育工学・情報教育の研究、また多方面にてご活躍されている赤堀先生に、全3回にわたり、 世界のIT教育先進国の取組みについて語っていただきます。


写真1/ニュージーランドの小学校の総合的な学習

問題解決の授業

 ニュージーランドは、オーストラリアに隣接した国で、キウイの果物と動物で知られている。ニュージーランド、オーストラリアは、イギリスの影響が大きいので、これらの国では、だいたい似たような授業形態と考えてよい。小学校では、総合的な学習が伝統的で、問題解決の仕方を学ぶ。近年では、教科の学力向上が強調されて、教科の学習に比重を置いているが、問題解決の学習はきちんと残っている。
 写真1をご覧いただきたい。数人の子ども達が紙に書いているのは、ゴミ問題をいかに解決するかという学習である。このように、中心に「ゴミ問題」と書いて、その周りにいくつかの関連する内容を書いて、線で結ぶ方法は、イギリスでも、オーストラリアでも、日本でも同じである。ウェッビングとかKJ法などと呼ばれる方法で、グループの子ども達が考えた内容を、関連づけて全員が確認することで、さらに新しい発想が生まれるからである。
 この例では、写真のように、包装紙を持ってきて、これを捨てたらどうなるか、など具体的にイメージしながら話し合う。話し合った問題点をリストアップし、同時に、それらの問題を解決するには、どのようにすればいいか、対策を考えて、というように、問題点、解決方法、そのためにすべき活動までまとめている。

 


写真2/ニュージーランドの小学校のコンピュータ教室

情報活用の道具

 さて、このように問題点をリストアップし、解決方法を考えたら、いくつか活動する必要がある。どの程度のゴミが生じているのか、どのようなゴミの種類があるのか、それを燃焼させると、どの程度のエネルギーを出すのか、さらには地球温暖化まで関わるとすれば、グループの子ども達だけの話し合いでは難しい。どうしてもインターネットなどで調べることになる。
さらに、まとめた内容はコンピュータで保管しておく必要がある。次回の学習で、どこまで進んだかをチェックし、今後どのように進行させるかを話し合うには、これまでの活動の記録が必要だからである。その記録が、文字、デジカメの写真、イラスト、などを含んでいたら、コンピュータでなければ処理できない。記録が長期であれば、なおさら紙では難しい。このような記録がポートフォリオと呼ばれていることは、よく知られているが、文字通りデジタルポートフォーリオを作成している。

 

赤堀 侃司  先生 プロフィール

東京工業大学 教授

略歴

昭和19年7月21日,広島県呉市生まれ,
静岡県高等学校教諭、東京学芸大学講師,助教授,
東京工業大学助教授を経て,平成3年3月から現職,
平成6年,カリフォルニア大学アーバイン校コンピュータ科学部客員教授
東京工業大学・教育工学開発センターおよび大学院社会理工学研究科
人間行動システム専攻教育工学講座に在籍,
国連大学高等研究所客員教授・放送大学客員教授・文部省メディア教育開発センター客員教授の兼任
各種委員等は、文部省、青少年を取り巻く有害情報環境対策に関する調査研究協力者,
研究開発学校企画調査協力者会議の協力者,など

 

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